[4-E-3-03] 社会変革型医療データサイエンティスト育成(DHIEP)プログラム
近年のライフサイエンス・ヘルスケア領域の進展において、医療ICTの浸透とAI技術の活用、データサイエンスの知識は必要不可欠な要素となっている。しかし、本領域はこれまで医師や研究者の「勘と経験」が重視されてきた過去もあり、データサイエンスを専門とする人材の育成がなかなか進んでいないのが現状である。そのため、本領域のデータサイエンティストは世界的にも不足しており、特に日本では緊急性が増している。このような状況を解決すべく様々な人材育成事業が実施されているが、当領域で求められる人材の育成に必要な要素は多岐に亘るため、体系的かつ十分な質を担保した育成プログラム開発には課題があり、このままでは日本の医療、創薬が世界に立ち遅れることが懸念されている。そこで、京都大学医学研究科では、2018年にデロイトトーマツグループとの共同研究を開始し、大学院生と社会人を対象としたDHIEPプログラムの開発に取り組んできた。このプログラムでは、データ解析だけを行う従来のデータサイエンティストではなく、本領域における課題の発見から解決方策の提案と実装が行える「社会変革型」データサイエンティストを育成することを目的とし、体系的なカリキュラムを開発した。試行的な講座の実施を経て、2019年より本格的に講座提供を開始した。10名程度を定員にスタートしたが、その後の需要の高まりを受けて、定員を拡大し、さらに講義動画のみを視聴する動画コースを設定した。現在進行中の第5期までに、90人以上の方に参加をいただいている。本発表では、講座設計からカリキュラムの詳細と受講生の声を紹介するとともに、講座提供を通して実感した医療データサイエンス人材育成における課題や展望についても議論したい。