一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-3-04] 日本における遠隔ICU普及のための道程

*橋本 悟1 (1. NPO法人集中治療コラボレーションネットワーク)

Tele-ICU, Critically ill patients, work-style reform

2020年に発生したCOVID-19によるパンデミックはそれまでの医療の常識を覆し、その結果さまざまな変革をもたらした。この間、医療資源の乏しい施設を支援する遠隔ICUの機能についても一時的措置ではあるが厚労省も認めることとなった。日本集中治療医学会では諸外国の動向も鑑み、遠隔医療学会はじめ関係学会の協力を要請しこの分野での普及を目指すこととなった。
この流れの中で、我々は遠隔ICUの推進、集中治療領域のデータの標準化による施設間の統合データ形成、データサイエンティストと医療者の共創の場提供などをミッションとしてNPO法人集中治療コラボレーションネットワークを立ち上げた。この間、遠隔ICUの構築に際して、様々な問題が山積している。特に問題になったのは重症部門系の施設間データの統合問題である。遠隔ICUでは一つのセンターが複数病院の100−150ベッドを同時にあつかうこととなる。多くのベッドを同時に扱うセンターに勤務する医師にとっては統一されたデータを目視できることが患者重症度の把握のために必要である。またAI等を用いた重症化予測なども実装することが求められる。しかしながら現状において、国内においては系列病院においても異なる電子カルテや重症部門システムを導入しているケースが散見され、一部のバイタルデータを除けばデータの標準化、施設間データ統合はかなり困難であると言わざるをえない。その意味では自動運転車の開発にも似て、信頼できるシステム構築にはまだまだ時間がかかりそうである。