一般社団法人 日本医療情報学会

[4-G-4-04] 新型コロナウイルス感染症における入院後重症化リスク因子の探索的解析

*鹿内 緑久1,2、古畑 宏樹1,2、松田 敦義1,2 (1. 株式会社ログビー, 2. 都立産業技術大学院大学 医療情報研究所)

Aggravation, COVID-19, Temporality

【目的】著者の過去研究において、DPCデータを用いた本邦における新型コロナウイルス感染症の重症度基準の再現方法を提示し、同感染症の患者における重症度基準別の死亡率および入院後重症化率を評価した。本研究は、この過去研究において作成した解析用データセットを再利用し、同感染症の罹患者における入院後早期の重症化リスク因子を探索する。
【方法】まず、本研究における入院後重症化を「入院日翌日以降に初めて人工呼吸器を装着 または ICUに入室」と定義した。次に、リスク因子の候補として新型コロナウイルス感染症向けに新設された各種評価基準(入院時重症度:軽症/中等症I/中等症II、年齢×BMI:65歳未満×30未満/65歳未満×30以上/65歳以上×30未満/65歳以上×30以上、基礎疾患:なし/1種類/2種類以上)別に、入院後重症化の累積発現率とハザード比をそれぞれKaplan-Meier法、Coxの比例ハザードモデルを用いて推定した。
【結果】解析用データセット(5,442名)における平均在院日数(13.4日)到達時点での累積発現率(全体4.7%)およびハザード比は、中等症II(累積死亡率7.3%、ハザード比1.71(対:軽症))、65歳以上×BMI30以上(同10.7%、2.95(対:65歳未満×BMI30未満))、基礎疾患2種類以上(同6.9%、1.87(対:なし))が顕著に大きかった。
【考察】今回候補としたリスク因子は、高リスクと想定される層ほど累積発現率およびハザード比が大きかったことから、本邦において設定されたこれらの評価基準は、単に死亡リスクや重症化の有無を捕捉可能なだけでなく、入院後の重症化リスクという経時性を踏まえたリスクをも捉えられることが示された。今後は他の因子(例:検査値、投薬)にも適用し、新型コロナウイルス感染症における入院後重症化リスクを精緻に解明したい。