一般社団法人 日本医療情報学会

[4-H-2-01] NLP(自然言語処理)を用いた診療情報からの特徴抽出と、鑑別疾患を予測するAIモデルの作成と評価

*中村 明央1、諸星 北人2、土屋 静馬3、新井 元子1、佐藤 宏幸1、矢木 健太1、佐藤 竜也4、岩本 和樹4、岩村 亮4、當眞 重天4、小倉 花歩4、岩倉 友哉4、木村 昌弘4 (1. 昭和大学 総合情報管理センター, 2. 昭和大学 医学医学部衛生学公衆衛生学講座, 3. 昭和大学 医学教育学講座, 4. 富士通株式会社)

NLP, RWD, Differential disease

【背景】非専門領域を含む幅広い疾患への対応が求められる診療所や救急外来では、知識及び経験を有する専門医へのコンサルトの要否を迅速に判断する必要がある。しかし、医師の数や対応できる患者は限られており、判断遅延や重大な疾患の見落とし、医療者の負荷増大といった問題がある。 【目的】本研究では、電子カルテに記載される患者主訴や現病歴、既往歴を含む診療録などのリアルワールドデータから、疾患に寄与する重要なキーワードを特徴抽出し、これを用いて鑑別疾患を予測するNLPベースのAIモデルを作成・評価することを目的とした。 【方法】昭和大学と富士通の共同研究にて、昭和大学横浜市北部病院の電子カルテシステムに保存されている2001年から2023年までの診療録を用いてAIモデル作成と評価を行った。評価対象の症例として消化器系の疾患(累計9967症例)を対象とし、作成したAIモデルの精度評価と昭和大学横浜市北部病院の医師による有用性評価を行った。 【結果】作成したAIモデルの精度評価は、予測候補として提示する鑑別疾患の上位10件に正解疾患が含まれる確率で評価した。DPCの医療資源病名の定義で評価した結果、85.5%の精度となった。また、有用性評価は医師11名(消化器系専門医9名、初期臨床研修医2名)にて実施した。AIからの鑑別疾患の提案により医師が鑑別疾患を再考した割合は、約70%であった。 【考察】本研究にて作成・評価したAIモデルの精度および有用性の結果から、重大な疾患の見落とし防止や医療者の負荷削減に向けて、効果が期待できるものと考える。また、本研究の最終成果として、患者のQOL向上や医師の心の働き方改革(心理的負担の軽減)といった臨床現場への寄与に加え、模擬患者への医療面接など学修していく医学教育、一般利用者が入力した症状の解析を介した医療機関への受診勧奨など、幅広い分野への還元が期待される。