一般社団法人 日本医療情報学会

[4-H-2-02] 電力センサーを用いたMCI患者分類のための機械学習モデル構築に関する研究

*木村 倫人1,2,3、西森 誠2,4、中奥 由里子2、村田 峻輔2、竹上 未紗2,5、尾形 宗士郎2、竹村 匡正3,6、西村 邦宏2 (1. 千葉大学医学部附属病院 病院帳企画室, 2. 国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部, 3. 兵庫県立大学情報科学研究科, 4. 神戸大学大学院医学研究科, 5. 東京大学大学院医学研究科, 6. 国立循環器病研究センター 医療情報部)

MCI, electric power sensors, older people, machine learning

近年、認知症に対する研究・治療薬開発が進むにつれ、認知症の前駆段階である軽度認知障害(MCI)にも注目が集まっている。MCIは、認知機能の低下が認められるものの、日常生活は正常で、認知症の診断基準を満たさない状態を指す。MCI患者に適切に介入することで認知機能を回復、維持できることが先行研究により示唆されている。MCI患者の認知症への進展を防ぐことは、来る超高齢化社会において重要である。一部の認知症患者は、昼夜逆転など生活状態に変化が現れることが広く知られている。このことから、MCI患者にも生活状態に違いがあることが考えられる。一方、IoT技術の発展により、日常のあらゆるものをデータ化し蓄積できるようになった。近年では、消費電力の波形から家電の使用を特定するセンサーも実用化された。本センサーを用いて高齢者の生活状態を定量的に評価することで、MCI患者を分類できる可能性がある。これまで、一次元畳み込みニューラルネットワーク(1DCNN)モデルを用いて、宮崎県延岡市の84世帯88人の研究参加者に認知機能テストを実施し、センサーから得られた電力データで正常群とMCI群の分類を試行したところ、正解率が0.690、再現率が0.340、適合率が0.191、ROCが0.687であった。今回は、同居者による電力データの影響を排除するため、上記88人の中で独居の者と、新規に研究に参加した同市の独居者の計48人を対象とした。電力データ、研究参加者の年齢、性別、教育歴を1DCNNモデルに学習させ分類を試行したところ、正解率が0.845、再現率が0.921、適合率が0.574、ROCが0.932であった。本研究により、独居者の認知機能低下をセンサーから予測できる可能性、および認知機能の低下と家電使用の変化の関係が示唆された。今後は分類性能の向上および他地域のデータでの外部妥当性検証を行う。