一般社団法人 日本医療情報学会

[4-H-2-05] 誤嚥性肺炎の研究に胸部レントゲン検査データの利用を試みた際に、理解されたデータベースの現状と課題

*松本 彰紘1 (1. 広島大学病院)

Database, Aspiration pneumonia, X-ray image, Medical DWH

【背景】日本での肺炎入院の約7割が75歳以上の高齢者であり、高齢者肺炎の7割以上を誤嚥性肺炎が占めている。誤嚥性肺炎の診断では胸部レントゲンが重要だが、画像データを研究に直接利用することは難易度が高く、検査目的や検査所見データの利用が検討される。そこで当院のデータベースを用いて、これらのデータの傾向を検証した。
【方法】2013年4月から2023年3月の10年間に当院に入院した全患者を対象とした。診療DWHを用いて誤嚥性肺炎の病名、入院胸部レントゲンの有無、検査目的および臨床診断を抽出し、誤嚥性肺炎を罹患した可能性がある患者の割合と、胸部レントゲンのデータ傾向を評価した。
【結果】のべ18万5242人の入院患者、55万1837件の胸部レントゲンが抽出された。誤嚥性肺炎の病名が記録された患者は7703人(全体の4.2%)であり、このうち入院胸部レントゲン検査が行われた4758人(全体の2.6%)が、本研究で誤嚥性肺炎を罹患した可能性がある患者と考えられた。検査目的に肺炎のワードが含まれた患者は2147人(誤嚥性肺炎疑いの45.1%)、誤嚥または嚥下のワードが含まれた患者は770人(誤嚥性肺炎疑いの16.2%)だった。臨床診断については、胸部レントゲン検査のデータとして記録されたものは0件だった。
【考察】 胸部レントゲンのデータは放射線診断科の部門システムにも保存されている。しかし検査目的や画像所見は自然言語で記録されることが多いこと、また部門システムのデータを部門外のスタッフが研究利用することは技術障壁・心理障壁が高いことから、現状では胸部レントゲン検査データの事後研究利用は難しい。胸部レントゲン検査データの研究利用を促進するためには、データ入力方法を定型化、通常データと部門データを統合・検索するシステム、臨床とデータ利用を理解した人材の育成が必要であると考えられた。