一般社団法人 日本医療情報学会

[4-J-1-01] 新しい画質評価法 SNR*のimageJへの実装と医用画像評価事例

*田淵 真弘1、木口 孝1、池長 弘幸2 (1. 医療法人社団 同仁会 金光病院, 2. 川崎医科大学附属病院 中央放射線部 画像診断センターI)

SNR*, imageJ, stationarity

近年,医療放射線技術分野において信号対雑音比(SNR : signal to noise ratio)や対照度対雑音比(CNR : contrast to noise ratio)など独自の画質評価方法が医療用X線CT, MRI,マンモグラフィーなどさまざまなモダリティにおいて確立されている.ただし,これらの画質評価方法は,局所領域の信号と雑音を評価する手法であるため,画像全体,特に複雑なテクスチャを含む画像の全体像を総合的に評価することは難しい.一方,情報通信理論と電気電子工学の分野で古くから使われてきたSNRは,画像全体を総合的に評価できる.ただし,従来のSNR計算においては計算用の原画像 (ノイズのない画像) を必要とするが,ほとんどの医用画像機器は原画像を生成不能であり,従来法を用いてSNRを測定することは不可能である.この問題を解決するため,X線CT画像分野において1対の観測画像の共分散から信号電力を推定する新たな手法であるSNR*を提案した.
本研究はSNR*をNIH(米国国立衛生研究所)が提供する画像処理ソフトウェアであるimageJへ実装した.先行研究ではSNR*の計測域を画像全体としているが,imageJの関心領域(ROI:region of interest)描画機能を活用することにより任意形状の計測域に対してもSNR*の計測が可能となった.しかしながら,ROIサイズが極めて小さい場合,雑音の定常性が損なわれ計算結果が不安定に陥る不利点がある.安定したSNR*の値を得るため,雑音の定常性を保持できる十分なROIサイズの決定は今後の課題である.