一般社団法人 日本医療情報学会

[4-J-3-01] 新興感染症の隔離病床の設置に対する補助金制度の改良シミュレーションのためのパラメータの検討

*古畑 宏樹1 (1. 株式会社ログビー)

COVID-19, Dynamic programming, Emerging infectious disease, Health policy

【目的】本研究は、新興感染症の専用病床の設置に対する補助金制度の実施シミュレーションに必要なパラメータを、実データを用いて再現するための要件について検討する。
【方法】先行研究であるMa et al (2022)にて提示された17個のパラメータ(対象:新型コロナウイルス感染症)を、DPCデータにて記録されているデータ項目を用いて再現できるか否かを評価した。なお、この先行研究は、これらのパラメータを用いた動的計画法による補助金の支給シミュレーションを行っている。
【結果】17個のパラメータのうち8個は、DPCデータのデータ項目を当てはめることにより代替指標として再現可能である。このうち7個は入退院患者数(新型コロナウイルス、救急、その他の3区分)に関連する指標、1個は新型コロナウイルス患者にかかる医療費である。残りの9個のうち、7個は補助金制度の評価にかかる指標、1個はシミュレーション回数、1個は専用病床の初期値であった。
【結論】先行研究では仮想値を設定してシミュレーションを行っていたのに対し、本研究では実データを当てはめて同様のシミュレーションを行うための要件を提示した。この結果を活用することで、定期的な精算(例:補助金の月次支給)を前提とする動的な補助金制度の設計につなげることが期待される。ここで言う「動的」とは、将来における感染症の流行状況の変化に応じて補助金制度の内容を修正できる(例:感染者数の減少が見込まれる場合に補助金の支給を打ち切る)、という意味だけでなく、パラメータの工夫による専用病床の設置形態(例:既存病床の転用、臨時診療施設の新設)を考慮したシミュレーションが実施可能である点をも包含しており、限りある財源の効率的な運用に資すると考えられる。