Japan Association for Medical Informatics

[4-J-4-03] 医療分野のデータ二次利用許諾を妨げる要素に関する文献的考察

*Yoshiro SHIRAI1, Emiko MINAKUCHI1, Shoko NUKAYA1, Masahiro FUJIWARA1, Akio YONEYAMA1, Masato TAYA1, Takashi OMURA2, Shima NAKAYAMA2, Ysushi TAKAI2, Yoshihiko IZUMIDA2 (1. 株式会社KDDI総合研究所, 2. 埼玉医科大学総合医療センター)

Data donation, Informed consent, Literature review

【目的】医療分野におけるデータ二次利用に関して、二次利用を許諾しにくい患者の特徴について文献レビューを行い、日本国内でのデータ二次利用を行うための患者把握と示唆を得ることを目的とした。
【方法】文献検索はPubMed、J-stageのデータベースを用いて、任意の検索ワードで2012年以降の論文を検索した。除外基準に該当する論文を除き、目的に関連する研究論文を抽出した。日本人を対象とした論文が抽出されなかったため、除外基準に該当する論文から日本人対象者を含むメタアナリシス1件を追加してレビューした。
【結果】14件の論文がレビュー対象として抽出され、1件がシステマティックレビュー、3件がRCT、10件が質問紙調査であった。アジアでは韓国人が対象の1件、欧米人を対象とした研究で12件であった。データ二次利用の許諾を妨げる要素としては、データ利用者(大学・研究機関以外の利用等)、匿名性やプライバシー保護への懸念、国外への二次利用等が報告されていた。データ二次利用を許諾しにくい患者の特徴として、高齢、女性、低学歴、マイノリティな人種、健康保険に未加入、強い宗教心等が報告されていた。追加のレビューからは日本人ではデータ提供の許諾率が他国よりも低いことが示されていた。
【考察】医療分野において患者がデータの二次利用を拒絶する要因には、文化・宗教的因子及び社会構造的背景が関与していることが示唆された。我が国においてPatient-Centric Healthcareを推進するためには個人に帰属する患者生成健康データ(PGHD)や医療機関に存在する個人情報の利用をどのようにとらえているのか心理学的及び社会学的検証が必要である。その為には豊富な諸外国の報告例を参考に、日本における市民の意識やそれを規定する背景因子を理解し、患者・市民参画(PPI)を推し進める必要があると考えられた。