[2-B-1-02] 医薬品や食物の禁忌・アレルギー情報の共有における医療安全上の課題
患者の視点から見た、医療の質と安全の最重要指標の一つとして、「継続的で統合されたケア」が1980年代から挙げられている。即ち、治療場所が変わっても、患者の病態、患者の価値観を反映した治療方針、患者への害を防ぐために重要な情報等が正確に共有され、統合的で安全な治療が継続されることが求められてきた。一方で、多併存疾患化、医療情報データの増大化の中で、効率的に情報収集を行うことに困難を感じている医療者が多いのが現状である。令和7年度に稼働予定である「電子カルテ情報共有サービス」は、こうした課題を部分的にでも解決しうると期待される。特に、患者に害を与えないための重要な情報である、医薬品や食物のアレルギー・副作用情報の共有は、医療安全上きわめて重要な機能である。本合同委員会では、この新サービスが、臨床現場で活用され、安全な医療提供に寄与するためには、どのような事前準備が必要かについて議論を行ってきた。 新サービスの運用前に検討しておく事項として、①入力項目の意味を明確に定義すること ②正確性(根拠)と重要性(アナフィラキシーや重大な有害事象の有無)を鑑みた、共有情報の層別化 ③情報の更新状況が把握できる仕組み ④効果的・効率的に現場が活用できる仕組み(カスタマイズされた電子カルテに対応可能か、自動引用やアラート機能への自動反映が可能か、給食・薬剤部門システム等との連携は可能か等)などが挙げられる。 これらの検討のために、電子カルテベンダーへの働きかけが必要であるとともに、各施設では、薬剤、栄養管理、放射線、医療情報、医療安全等の各部門が連携し、自施設の電子カルテ登録情報をどのように新サービスに反映させるかを検討する体制づくりが必要となる。また、医療者に対しては、アレルギー・副作用情報の重要度と根拠の入力や整理、情報の更新等が医療安全上重要な責務であることを周知する必要がある。
