一般社団法人 日本医療情報学会

[2-C-3-02] 副作用報告からシグナル検出をする方法について(医薬品の場合)

*小出 大介1 (1. 東京大学大学院医学系研究科 生物統計情報学講座)

医薬品に関しては、ICHという薬事規制の国際ハーモナイゼーションで取り決められた国際標準様式にて電子的個別安全性報告(副作用報告)がなされており、大規模データベースとして蓄積されている。またこの副作用報告の中で使われる用語もICHで取りまとめられたMedDRAという国際医薬用語集を用いることになっている。その大量な副作用報告のうち、重要な医薬品と有害事象との関連性で詳細調査が必要とされるものがシグナルであり、そのシグナルを検出して調査の優先順位付けをするのがシグナル検出(ディテクション)である。このシグナル検出の方法にはデータマイニングが使われ、PRRやRORなどの指標が医薬品の領域では確立しており、このシグナル検出の結果を踏まえて、医薬品の添付文書改訂などが実際になされている。このシグナル検出の方法には幾つか前提があり、まず、「ある医薬品が特定の副作用を引き起こすのであれば、他の医薬品に比べて、その医薬品に関してその特定の副作用が多く報告されるという不均衡(アンバランス)が生じること。従って不均衡分析とも言われる。前提2は、「着目する特定の副作用について、報告の程度(通常は過小報告の程度)は、異なる医薬品でも同じである。前提3は、「様々な副作用の報告割合や報告パターンは、異なる医薬品においても同様である」ということである。そしてその時点で報告されている全ての副作用報告をもとに、着目する特定の医薬品とそれ以外の医薬品について、着目する特定の副作用の報告件数とそれ以外の副作用の報告件数を集計して2×2の分割表を作成して計算する。しかしシグナルの大小をあたかもリスクの大小であるかのように扱ったり、前提を考慮していない不適切な研究も増えており、医薬品情報学会がチェックリストを作成して注意を喚起している。