Japan Association for Medical Informatics

[2-C-3-06] 不具合報告数の変化をシグナルとして用いるための検討について

*Kohei Takahashi1, Daisuke Koide2, Hideto Yokoi3 (1. Clinical Research Center Chiba University Hospital, 2. Department of Biostatistics and Bioinformatics Graduate School of Medicine Faculty od Medicine, 3. Department of Medical Informatics Clinical Research Support Center)

医薬品の有害事象に対して関連性の有無を検討するシグナル検出には不均衡分析が用いられ、不均衡分析は他の医薬品との報告数を相対的に評価して算出する指標で評価される。医薬品の有害事象のシグナル検出方法はある程度確立されているが、医療機器では確立していない。医療機器の不具合、健康被害の報告数に対して不均衡分析を実施すると医療機器の不具合、健康被害報告の特性上、不具合や健康被害がない場合の報告も含まれ、この影響で結果にバイアスが入ることが想定される。また機器特有の不具合を評価する場合、他の機器との報告数を比較できないことから相対的な評価を行うことができず、絶対的な評価結果として扱わざるを得ない。2015年に発表された論文では、医療機器の健康被害の報告数を時系列データとして扱い、変化点分析で報告数が急激に増加した変化点を検出することで、変化点分析をシグナル検出の手法として適用できる可能性が示唆された。医薬品医療機器総合機構が公表している「不具合が疑われる症例報告に関する情報」を中心に、大動脈用ステントグラフトの不具合の一つであるエンドリークの、月ごとの報告数で変化点分析を適用した結果、シグナル検出の手法として適用できる可能性が示唆された。しかし実用化には解決すべき課題が数多く存在し、時系列データの解析であるが故、市場に出回ってからの期間が短い医療機器や、発生が稀な不具合、健康被害では正しい検出ができないことが想定される。他にも、使用数の増加と報告数の増加は関連があることから、報告数を指標として用いることが適切かを検討する必要がある。変化点分析を国内で使用されているすべての医療機器の不具合、健康被害報告に対して、シグナル検出の方法の一つとして検討するためには手法の改善と向上および用いるべき指標を精査することが必要になる。