Japan Association for Medical Informatics

[2-C-5-01] 電子カルテ端末からの利用を見据えた医療AIサービスの開発

*Kohji Okamura1, Toshihiro Matsui1 (1. National Center for Child Health and Development)

pathogenic bacteria, Fabry disease, genetic counseling, serveless computing, zero trust

ディープラーニングを中心とした人工知能の発展は医療にも大きな影響を与え、我が国では内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム等により、医療の質や効率の向上だけでなく、地域格差の解消、医療従事者の負担軽減など多岐にわたる検証が進められている。国立成育医療研究センターでは2018年のAIホスピタル事業採択を機に、研究所の研究者、病院の医師だけでなく、全ての職員を対象としたデータサイエンスの啓蒙、教育活動からスタートし、顕微鏡写真からの感染症起因菌同定支援、病理画像のグレーディング支援、尿沈渣の顕微鏡写真からの遺伝病スクリーニングシステム開発などを行い、実際の診療における補助手段としての試用も開始した。また大規模言語モデルによる生成AIの発展はここ数年特に目覚ましく、基盤モデルに用意されたAPIを介して遺伝カウンセリング支援、医療的ケア児の支援体制などのアプリケーション開発も進めている。クラウドシフトによる大小さまざまな医療機関からの利用を見据え、医療AIプラットフォーム技術研究組合との協力体制でこれらウェブアプリケーションのコンテナ化と仮想デスクトップ基盤を介した安全な通信環境の構築も試している。目標は、各医療機関の電子カルテ端末からこのようなサービスを自由に、かつ安全に利用できるようにすることであるが、個人情報保護や患者不利益等への配慮が求められ、ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃の危険性がますます高まっている状況にあっては、従来からの境界型防御に加え、ゼロトラストを前提としたシステム構築を避けることはできない。それだけでなく、信頼されうる安全性の実証が不可欠であり、かつ現状の最大の課題ともなっている。安心できる環境の実現は、患者および市民参画をも促し、ビッグデータに依存する医療AIのさらなる発展を期待することもでき、この点の議論を深めたい。