Japan Association for Medical Informatics

[2-D-1-02] RWDを用いた人を対象とする生命科学・医学系研究の推進:研究課題受付からデータ提供までのフロー構築

*Ryo Takemura1, Takahiro Imaizumi2, Matsuki Eri1, Kuroda Tomohiro3 (1. Keio University Hospital, 2. Nagoya University Hospital, 3. Kyoto University Hospital)

real-world data (RWD), distributed database, data provision workflow, Rinchu-Net

臨中ネットのような分散データベース(DB)を想定したReal World Data (RWD)の利活用において、研究課題受付からデータ提供までのフローを適切に構築することは、研究者、データ提供施設の双方にとって重要である。病院の電子カルテに保管された診療情報や検査結果などをRWDとして利活用することは、新たな侵襲や介入がなく、低コストかつ短期間でデータを得る方法として注目されている。また、これらのデータは、医療の実態を示し、臨床試験だけでは得られない貴重な知見を提供できる。一方、個人情報保護や同意取得、データの正確性と品質保証、データが含むバイアスに関する問題など、様々な課題が存在する。本稿では、RWD研究におけるデータ提供の方法について検討する。

集積された医療データを不特定多数で利用する形式には、いくつかの類型があり、それぞれに利点と難点がある。例えば、強固に匿名化されたデータをオープンに提供する方法は、個人情報保護の観点から安全で、提供コストが低いという利点と共に、必要な範囲で十分に詳細なデータを得難いという難点がある。一方、詳細なデータを限定的な相手にだけ共有する方法では、必要なデータを安全に提供可能だが、その仕組みの構築と維持には高いコストがかかる。

臨中ネットは、すべての臨床研究中核病院の医療情報を、分散DBとして統合し、利活用する仕組みである。不特定多数の研究者の利用を念頭に置いた臨中ネットにおいては、可能な限り完全なデータを安全に提供することを前提としながら、低コストで持続可能な体制を構築することが課題のひとつであった。研究者とデータ提供者が共に安心してデータを利用できる環境を整え、安全と効率のトレードオフや情報提供の体制に必要な機能、およびそこで共有すべき情報とそのインタフェースについて検討した。その結果をRWD活用の一例として報告する。