Japan Association for Medical Informatics

[2-D-3-03] 予防的抗菌薬投与率算出を目的とした麻酔記録のPDF解析による後利用データの蓄積

*TAIZO Murata1, Seiya Wada1,2, Raiki Mukai1, Misako Ishii1, Katsuki Okada1,2, Toshihiro Takeda1,2 (1. 大阪大学医学部附属病院, 2. 大阪大学大学院医学系研究科)

Prophylactic Antibiotic Administration, PDF Analysis, Data Warehouse

【目的】手術部位感染の防止のために手術前の抗菌薬投与がガイドラインで推奨されている。また、2024年6月からDPC調査においても予防的抗菌薬投与の項目が追加され、その実施状況を管理する必要性がより高まった。予防的抗菌薬投与は、手術室で全身麻酔の患者に対して実施されおり、その投与時間は麻酔記録に記載する。麻酔記録は、部門システムを利用しており、そのデータは病院ユーザが分析可能な形で蓄積されていない。一方で、麻酔記録は診療録としての長期保管のために、文書統合管理システム(DACS)へPDFファイルを保存しており、そのデータは一括ダウンロードが可能である。そこで、DACSに保存されている麻酔記録に対してテキスト解析するプログラムを作成し、PDFデータから後利用データを作成し、DWHへ蓄積した。
【方法】麻酔記録のフォーマット上、入室時から退室時までの時系列データを“入力データ一覧”のタイトルがついた項目の下に時刻、内容(例:10:00、入室)を表形式で出力している。抗菌薬は、その一連の中で記載されている。そのデータは、手術によっては複数ページとなることもあるため、“入力データ一覧”のあるページを特定した。そのページに対してPDFの表の値を取得するpythonのcamelotモジュールによりその値を取得した。その一覧のデータと抗菌薬名をリストした辞書とマッチングし、不要なレコードを除去した。最終的に麻酔記録上の患者ID,手術日、手術開始時間、入力時間、抗菌薬名の一覧を作成し、院内のDWHへETLツールを用いて保存した。
【結果】2024年5月の麻酔記録585件に対して処理を実行したところ、すべての麻酔記録の時系列データの取得ができた。そのうち抗菌薬投与有は501件であった。処理時間は約3時間であった。
【考察・結論】月次での麻酔記録を処理し、データを蓄積するフローを確立することにより、予防的抗菌薬投与率の算出が可能となった。本手法は、過去に遡って適用できる手法であるため、DWHに不足したデータを補う有効的な1つの試みであると考える。
【倫理的配慮】本研究は、個人情報の適切な管理を行い、病院情報システム内から外部出力をせずに処理を実施した。