Japan Association for Medical Informatics

[2-D-5-01] 医療データと知財権

*Masaho Ishino1 (1. Sapporo Medical University School of Medicine)

近年のビッグデータのAI活用に係る進歩は著しく、政府の知的財産推進計画(2021年版)にもデータは21世紀の最重要知財と記載されている。そういった視点から医療データについて考察すると、医療データは、カルテや健康診断データのように一義的には提供者の診療や健康管理を目的として集められるものと、治験・臨床研究データのように研究・開発目的で集められるものとに大きく分けることができる。前者は二次利用によって大きな知財的価値を生み出し得るものだが、データそのものを知的財産と呼ぶには語弊があろう。一方で後者は、研究者の綿密な計画のもとに体系的に集められるものであり、それ自体、知的財産的な価値を有するものである。知財権としても、症例報告書(CRF)の内容を集めたEDCシステムにはデータベースの著作権が存在するものと思われるし、公表する前のデータ(もちろん公表は匿名化が前提)は営業秘密として不正競争防止法でも保護されるべき対象ということができる。しかしそれらの試験データはいったん論文の執筆や製品開発等に使用され、収集に係る目的を果たした後は、必ずしも秘匿あるいは独占・制限的に使用され続ける必要性がない場合が多いものと考えられる。つまりデータの知財的活用とデータシェアリングは決して相反するものではなく、両者の意義と活用場面を十分に理解し、特にデータ収集(あるいは構造化等)のインセンティブを知財権等によってきちんと担保したうえで、データシェアリングを図っていく必要がある。