一般社団法人 日本医療情報学会

[2-E-1-04] 製薬企業へのアンケート調査結果:PV領域でのAI活用の現状と期待

*太田 実紀1、岡本 里香2 (1. 東京大学医学部附属病院、2. 神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)

海外では、薬事規制へのAI技術導入のためのガイダンス作成及びPV活用への議論が進みつつあるが、日本では未検討の分野である。本研究は、日本初のガイダンス作成に資する研究として、ガイダンス作成に先駆けて、PV分野におけるAI活用の留意点を幅広く整理・抽出する必要がある。そこで、国内の製薬企業におけるPV用AIの活用に関する調査を実施したので、本発表で結果を報告する。
 国内製薬企業への調査として、日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 ファーマコビジランス部会の協力を得て、本部会に所属する75社に対してWeb(Google Form)によるアンケート調査を実施した。内容は国内のPV領域に限定し、AI活用ニーズ及び技術開発・活用動向を調査するため、PV業務プロセスを「個別症例評価」、「症例評価」、「リスク最小化活動」に対するAI活用機会、情報ソース、効果(品質、コスト、納期)について、仮説を立案し、仮説に基づいてアンケート設問・回答選択肢及び一部フリー記述欄を設定した。
 75社中49社から回答を得た。49社中46社(93.8%)がPV業務におけるAIニーズがあり、個別症例評価の症例収集、症例評価の業務に対して特にニーズが高いことがわかった。一方で、リスク最小化活動に対するAI活用のニーズは16.3%(8社)と低かった。AI導入における課題や導入の阻害要因について239件の回答があり、「リソース・スキル」に関連する課題が31.8%(76件)で最も高く、AI知識のある要員確保・育成が必要と考えられた。一方で、パッケージシステムなどを活用することにより、スキル・リソース不足に対応できるのではないとの意見もあった。AI活用を促進する要因としては、「ガイドライン整備」32.8%(22件)が最も高く、AI導入にはバリデーションの運用を含めた規制上のルール・ガイドラインが必要と考えられた。