一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-1-03] オンプレ電子カルテにおける生成AI実装の効果と今後の課題

*藤井 将志1、那須 照広1、柳原 恵梨1、中澤 公貴2、丸山 由莉2 (1. 医療法人谷田会 谷田病院, 2. 株式会社ALY)

Generation AI, LLM, Healthcare Administration, Electronic Medical Records, Discharge Summaries

【背景】
近年、ChatGPTに代表される生成AIの急速な社会実装が進んでいる。膨大な記録業務が求められる医療現場においても、その活用は自明の理である。しかしながら、多くの医療機関ではオンプレミスを前提としたシステムが中心であり、クラウドベースの生成AIを活用するには乗り越えるべき課題が多々ある。API連携の困難さやデータベース使用の制限などが、病院主導でのデータ活用を妨げる要因となっている。

【方法】
谷田病院では、ヘルスケアテックベンチャー企業ALY社の協力のもと、これらの課題を克服し、クラウドの生成AIをセキュアに電子カルテ(CSI社MI・RA・Is/AZ)に接続した。退院サマリー作成への活用を開始したが、単に生成AIを使用するだけでは十分ではない。データ構造の理解や診療科による特徴の反映が求められ、複数の医師から繰り返しフィードバックを受け、プログラム構成やプロンプトの改善を重ねて精度を高めてきた。

【結果】
2024年5月から本格稼働を開始し、生成AIによる退院サマリー作成の利用が増加している。従来15分程度要していた作成時間が5分程度に短縮された。今後は看護・リハサマリー、診療情報提供書への展開も2024年内に予定されている。

【考察】
サマリー作成に限らず、電子カルテデータから処方日や入退院日の確認、処方変更の確認などをチャットで問い合わせることも可能となった。大量のデータから瞬時に対象情報を抽出することもLLMの得意とする領域である。今後、他の電子カルテとの接続も予定されており、医療現場における生成AI実装の一つの選択肢となり得るだろう。

【倫理的配慮】
本研究では、患者データの取り扱いに関して病院の包括同意・オプトアウト制度を適用している。生成AIの学習においては患者情報を仮名加工処理し、第三者への情報流出を防止している。また、サードパーティー側では学習データが提供されないよう配慮している。