一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-1-04] 国立高度専門医療研究センター(NC)における統合電子カルテデータベースのデータ利活用に向けた品質管理における実態調査

*小室 雅人1,2、熊谷 千尋1,2、大城 雄介2、櫻井 理紗1,3、北村 真吾1,4、星本 弘之1,2、長島 恵子2、渡部 大介1,5、三井 誠二1,6、渡辺 浩1,7、美代 賢吾1,2 (1. 国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部, 2. 国立国際医療研究センター, 3. 国立循環器病研究センター , 4. 国立精神・神経医療研究センター, 5. 国立がん研究センター中央病院 , 6. 国立成育医療研究センター, 7. 国立長寿医療研究センター)

EHR, Database, Quality management

緒言
 国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部は、研究への利活用を目指した6つのNCの統合電子カルテデータベース(6NC-EHRs)の運用を2022年4月より開始した。各NCの検体検査データは、ローカルコード(LC)による管理がなされており、JHが各NCから提供を受けるLCとJLAC10の変換表とでは、一部異なる検査法や単位等で運用されていた。RWDの利活用に向け、品質管理を目的としたデータ整備の取り組みを報告する。
方法 
 集積された6NC-EHRsデータを用いて次の2つの観点から、四分位数を用いて各検査項目を時系列に検証・評価した。
①1つの検査項目に複数のJLAC10が付与された項目のうち、免疫学的測定法が複数付与された10の検査項目
②全国的にJSCC法からIFCC法へ測定法が変更されたALPの推移項目は個⼈情報の匿名加⼯によって患者が特定されないよう配慮した。
結果
 誤ったJLAC10を付与していた2項目(BNP・FT3)とレンジに変化が生じていた3項目(BNP・トロポニンI・エリスロポエチン)が確認された。レンジの変化の要因は、測定法変更・試薬変更・単位変更によるものであった。 ALPは、JSCC法・移行期間・IFCC法の各レンジがあり、それぞれの中央値は236U/L・144U/L・83U/Lであった。
考察
 データベース(DB)における品質管理の視点から、付与されたコードの正確性を評価することは重要であり、測定法や試薬の違いによって、レンジの変化が確認された。これによりJLAC10付与の誤りが検出でき、データの標準化の推進に役立った。集積データの信頼性を担保するためには、潜在的な誤差要因を包括的に分析し、データ整備を講じる必要がある。レンジの変化から推察される測定法や試薬の変更は、DBの品質管理における異常推定の1つ因子として、利用可能であることが示唆される。