Japan Association for Medical Informatics

[2-F-1-06] 電子カルテデータを用いた虚血性心疾患の関連痛における歯痛を主訴とした患者の実態調査

*TAKASHI YAMAMOTO1,3, Kazumasa KISHIMOTO1,2,3, Yukiko MORI1,2,3, Tomohiro KURODA1,2,3 (1. 京都大学大学院情報学研究科, 2. 京都大学大学院医学研究科, 3. 京都大学医学部附属病院)

Ischemic heart disease, Referred pain, Non-odontogenic toothache, Electronic Medical Record

【目的】虚血性心疾患(IHD)の関連痛である歯痛を主訴とする患者対して、歯科受診時の実態についての報告は少ない。IHD患者の約60%は顎顔面領域に疼痛を有し、さらにその約6%では胸痛がなく顎顔面領域のみを訴えるという。しかし、その額顔面痛が歯科疾患による「歯痛」と判断され、不要な歯科治療を受けているかは不明である。IHD関連痛による歯痛を主訴としている患者がIHDと診断されるまでに不要な歯科治療を受けた場合の経済損失を明らかにするため、IHD患者のうち歯痛を訴える患者の割合を調査する。
【方法】京都大学医学部附属病院の2014年1月から2023年12月の10年間に「虚血性心疾患(IHD)」と診断された患者を対象として、「歯痛」に関する主訴を有する患者を抽出した。歯痛に関するキーワードには、「歯の痛み」など表記揺れを考慮して「”歯”AND”痛”」を抽出条件とした。
【結果】対象群のうち歯痛を主訴として訴える患者の割合は約10%となり、先行研究における額顔面痛の割合の範囲内に収まる結果となった。
【考察・結論】対象群をIHDに限定したため、当該疾患が包含していると想定した他の疾患、「陳旧性心筋梗塞」などが対象群から漏れている可能性がある。これは医師によって登録する診断名がICD10の大分類や中分類に標準化されていないためと考えられる。したがって検索ワードをさらに改良すれば、より正確な結果が見込まれる。また、観察された対象群に対して、IHDと診断されるまでの歯科治療の有無と、歯科治療後の痛みの変化等をアンケート調査することで、歯科臨床におけるIHD鑑別の重要性を定量的に示すことができると考える。
【倫理的配慮】本研究は京都大学医の倫理委員会(倫理審査番号: R4333)の許可を得て実施した。