Japan Association for Medical Informatics

[2-F-3-03] 看護業務におけるIoTデバイスと行動認識モデルの構築

*Keiko Yamashita1,2, Shintaro Oyama3, Tamaki Kinoshita1, Teruhiko Suzuki1, Yuji Sakamoto2,4, Yoshinori Ideno1,4, Aoi Kono5, Natsuki Nakayama5, Akiko Fujii1, Kensaku Mori2, Yoshimune Shiratori1 (1. 名古屋大学医学部附属病院, 2. 名古屋大学 情報学研究科, 3. 名古屋大学 未来社会創造機構, 4. 株式会社ケアコム, 5. 名古屋大学 医学系研究科)

Internet of Things, Bluetooth Low Energy, machine learning

【はじめに】少子高齢化と労働人口減少により、高齢者医療の需要が増加している。一方、医療現場では看護師不足と業務の多様化が業務負担を増大させ、効率化と健康管理が喫緊の課題となっている。健康問題関連の調査によると、看護師の77%が身体的負荷による筋骨格系疼痛を経験している。先行研究では、業務負荷や健康状態の評価に主観的アンケートが多用され、再現性と客観性に欠けることが課題であった。我々は看護師の位置情報と加速度情報の取得により看護行動の定量的評価が可能であると考えている。本研究は、位置および加速度センサ情報を用いた看護業務推定モデルの構築と評価を目的とする。
【方法】名古屋大学医学部附属病院ICU病棟で、看護師にBluetooth Low Energy位置測位システムと3軸加速度センサを装着し、位置情報と加速度情報を収集した。筋骨格系疼痛の要因となる15種類の看護行動を定義し、観察者が行動を観察して正解データを作成した。データは10秒ごとにクロップし、入力変数とした。決定木ベースの機械学習アルゴリズムを用いてモデルを構築し、5分割交差検証で性能を評価した。
【結果】認識モデルの精度は9割で、適合率、再現率、F1スコアのいずれも高い値を示した。特に位置情報が看護行動推定に高い寄与度を示した。
【考察】位置情報の高い寄与度は、輸液ポンプや血糖測定器などの固定設置医療機器に関連する看護行動で顕著であった。また、「聴診」や「吸引」などベッドサイドでの行動識別には加速度情報が有効であった。位置情報と加速度情報の併用により精度の向上が示唆された。これらの結果から、看護行動認識の有効性が確認され、看護業務の効率化と健康管理に貢献することが期待される。
【倫理的配慮】本研究はヒト資料を用いた基礎研究および臨床研究・疫学調査に該当しないが、看護師には研究の目的を説明し、同意を得てデータを収集した。データは匿名化され、個人情報が特定されないよう厳重に管理された。