一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-3-04] スマートフォンを用いた注射実施入力の外来看護業務への効果

*西田 菜都子1、長井 佐知子1、疋田 智子1、劉 暢2、山本 豪志朗2、黒田 知宏2 (1. 京都大学医学部附属病院, 2. 京都大学)

Outpatients, Mobile Device, Injection, Implementation Registration

【目的】外来処置室では、患者認証として名乗らせ確認を行なっていることに加え、病院によっては室内レイアウトの制約により看護師の動線が悪く、余分な時間や労力を要する場合がある。本研究では、注射業務に焦点を当て、スマートフォンの導入によりその過剰コストの低減を図り、実施状況からその効果を分析する。
【方法】従来の業務フローは、①患者氏名確認②紙の注射指示簿確認③注射④電子カルテ端末への移動・実施入力である。提案する業務フローは、従来の①②に続き③スマートフォンによる診察券と注射ラベルのバーコード照合・実施入力④注射とする。看護師は状況に応じてどちらかの業務フローを選択できる。京都大学医学部附属病院内科外来処置室を対象として、注射総数、スマートフォンでの入力数、インシデントレポート数等を計測する。また、注射に関わる看護師の一連の動作を観察する。
【結果】2023年12月から2024年5月末日における注射総数に対するスマートフォンでの入力割合は、月毎に51%、40%、52%、47%、65%、68%であった。従来フローでは、実施入力時に電子カルテ端末まで移動する必要があったが、提案フローでは患者のそばで照合・注射・実施入力を一貫して行うため、業務にかかる時間と動線が改善された。紙の指示簿に加え、スマートフォンでの患者照合と指示確認によって、薬剤の取り違えや投与量変更等を未然に防いだ報告が5件確認できた。また、事前に診察券を用意する患者の協力的な行動が観察された。
【考察・結論】スマートフォンによる照合・実施入力は、看護業務の効率性と安全性の向上に有効と考えられる。患者の協力的行動を活用するインクルーシブな運用設計によりさらなる効率化、安全性の向上が期待できる。
【倫理的配慮】本研究は看護師・患者の個人情報は取り扱わない。京都大学医学部附属病院看護部研究審査委員会の承認を得ている。