一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-1-04] 保険診療で集積された8万件のがんゲノム・診療データの集積と分析

*田中 諭1、吉田 輝彦1、玉井 郁夫1、温川 恭至1、白石 友一1、高阪 真路1、加藤 護1、小芦 尚人1、河野 隆志1 (1. 国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター)

cancer, genome, C-CAT(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics)

【目的】
 国立がん研究センターゲノム情報管理センター(C-CAT)には、2019年6月から開始された遺伝子パネル検査を受けたがん症例のゲノム・診療データが、およそ78,000件(2024年5月31日時点)登録されている。これは、全国のがんゲノム医療中核拠点病院(13)・がんゲノム医療拠点病院(32)・がんゲノム医療連携病院(221)(( )内は2024年7月1日時点の施設数)の医療者、患者、そして検査会社のご協力、ご尽力で集積された貴重なリアルワールドデータである。本研究はC-CAT集積データを分析することで、日本のがんゲノム医療の実態を把握することを目的とする。

【方法】
 遺伝子パネル検査が実施され、データの二次利用に同意を得ている99.7%の患者のゲノム・診療データを、遺伝子パネル、医療機関、年次など多面的に集計し、傾向を提示する。また、検査後のエキスパートパネル会議で新たな治療薬の提示があった割合(治療提示率)と治療が実際に行われた治療到達率について、傾向を提示する。

【結果】
 新たな治療法の保険収載などの状況を反映し、治療薬の開発が難しい膵がん、胆道がんなど難治がんの検査割合が増加している。それに伴い、遺伝子パネル検査受検例の治療提示率や治療到達率は、年々低下傾向にある。遺伝子パネル検査後の治療選択については、保険治療が最も多く(70%)、臨床試験への参加(20%)を大きく上回っている。

【考察・結論】
 それぞれの患者の病態に合わせゲノム検査や遺伝子パネル検査が選択されるがんゲノム医療の実態がC-CAT集積データの分析から見えてきている。今後、このようなデータを公開することにより、本邦がんゲノム医療の年次変化を共有したい。

【倫理的・配慮】
 医療機関で、遺伝子パネル検査受検の際、C-CATへのデータ登録、データ二次利用について、患者の同意を取得するとともに、同意撤回の機会を保障している。集積データの研究・開発への利用について、国立がん研究センターの研究倫理審査委員会の許諾を得ている。