Japan Association for Medical Informatics

[2-G-3-05] Real-World Dataを用いた肝線維化の危険因子の探索

*Ryota Uchida1, Yo Oishi1, Yuki Hyohdoh2, Yoshiyasu Okuhara2, Yutaka Hatakeyama2 (1. 高知大学医学部医学科, 2. 高知大学医学部附属医学情報センター)

data mining, liver fibrosis, steatotic liver disease, real-world data

背景と目的
 肝線維化は、肝硬変や肝細胞癌の発症に対する独立した危険因子であり、脂肪肝から進展することが多い。2023年にSteatotic liver disease(SLD)が脂肪肝の包括的な用語として提唱され、5つの心臓代謝危険因子やアルコール摂取度に応じて新たに分類された。本研究ではこれら新しい基準で用いられる因子を含め、SLD患者における肝線維化の危険因子をReal-World Dataを用いて探索・評価する。

方法
 高知大学医学部附属病院に入院および外来歴を有する18歳以上のSLD患者を対象とし、病院情報システムに蓄積されたデータを使用した(1981年~2023年)。SLDはFatty Liver Indexを用いて特定した(男性:35.1以上、女性:15.6以上)。解析対象データは年齢、性別、飲酒情報、腹囲、BMI、既往歴(高血圧症、高脂血症、2型糖尿病、肝炎ウイルス感染症の有無)、検体検査値(HbA1c、HDL-C、中性脂肪)、薬歴(2型糖尿病治療薬、降圧薬、高脂血症治療薬の処方有無)とした。FIB-4 index 1.3以上を肝線維化群とし、ゼロ時点をSLD判定時、観察期間を10年としたCox比例ハザードモデルを用いて、各項目の調整済みハザード比を推定した。有意水準は0.05とした。

結果
 抽出したSLD患者は195名であり、肝線維化群は35名であった。ハザード比は腹囲0.91(0.85-0.98)、高血圧3.48(1.01-11.96)で有意となった。

考察
 高血圧は肝線維化の独立した危険因子であることが示唆された。腹囲が小さいにも関わらずSLDを発症している場合、肝線維化のリスクが高いと考えられる。さらなる精査が必要であるが、本研究の結果にはSLDの予後予測や治療方針への寄与が期待される。

倫理的配慮
 仮名化したデータを用いて解析を行った。高知大学の倫理委員会の承認を申請した。