一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-5-03] FHIRによる医療リアルワールドビッグデータ構築における諸課題
~6NC-EHRsデータベースFHIR導入に向けたデータ品質検証~

*熊谷 千尋1,2、星本 弘之1,2、渡部 大介1,3、北村 真吾1,4、三井 誠二1,5、渡辺 浩1,6、櫻井 理紗1,7、小室 雅人1,2、美代 賢吾1,2 (1. 国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部, 2. 国立国際医療研究センター, 3. 国立がん研究センター, 4. 国立精神・神経医療研究センター, 5. 国立成育医療研究センター, 6. 国立長寿医療研究センター, 7. 国立循環器病研究センター)

Real World Data, HL7 FHIR, Data Validation

【目的】
 国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部では、6つのナショナルセンターのSS-MIX2標準化ストレージを用いて、6NC統合電子カルテデータベース(6NC-EHRs)を構築しているが、HL7 FHIRが普及しつつあるため、FHIRを用いてデータベースを構築可能であるかどうか検証を行った。
【方法】
 仕様の検証としてNeXEHRSが公開しているJP Core実装ガイドやSS-MIX 2 to FHIR 実装ガイド(実装ガイド)を参考に6NC-EHRsでの収集項目をFHIRリソースとマッピングした。実リソースの検証は、国立国際医療研究センターの匿名化されたFHIR JSONについて、単位・コード・日付・カラムの値・表現方法、標準コードの出力有無等について調査した。
【結果】
 6NC-EHRs収集項目をマッピングした結果、99項目中85項目が紐づいた。マッピング不可だったものは、病名修飾語等実装ガイドで未定義の項目であった。実リソースのうちConditionリソースを検証した結果、診断日等の日付情報は一致したが、病名コードがローカルコードしか出力されていない等、実装上の問題が見つかった。またHL7v2.5は病名本体と修飾語が別のフィールドに出力されるが、FHIRではそれらが結合された一つの項目になっていた。HL7v2.5の転帰区分は「寛解」・「中止」等11種類定義されているが、FHIRの臨床的状態のステータスは6種類であり、単純には対応づけできなかった。
【考察・結論】
 病名修飾語等FHIRにない項目は仕様上の問題であり、運用での対応の検討が必要と考えられた。病名標準コード未出力等実装の問題については、ベンダー側にフィードバックし改善を求める。今後は、検証対象ベンダーやレコード数を拡大し、結果のフィードバックによりFHIRの実装の品質向上や実運用上の課題の整理に貢献していきたい。