一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-3-03] 電子カルテ情報を医薬品の使用成績調査に活用する新モデルの構築

*落合 祐子1、片寄 妙子1、石丸 美香1、辻本 美嘉1、藤越 慎治1 (1. 日本イーライリリー株式会社)

EMR utilization for post-marketing safety study , Structured data, Data entry burden reduction

【目的】医薬品の世界同時開発の推進により、新薬の上市が早まる一方、治験では十分でない情報を補うため、臨床現場での安全性や有用性を評価する観察研究への期待が増加している。観察研究は非介入研究のため、治験に比べ、医療スタッフへのサポートが不十分で信頼性の高いデータを収集・管理するためには運用上の困難があり、より効果的なアプローチが必要である。そこで、観察研究の一つである医薬品の使用成績調査を、電子カルテ上の診療情報を活用して効果的に信頼性の高いデータを収集する新モデルをシステムベンダーと共に構築した。【方法・結果】 従来、使用成績調査を行うにあたっては、医師等がカルテなどから調査に必要な情報を臨床データ収集システム(Electronic Data Capture: EDC)に転記することが一般的である。新モデルでは、日常診療情報を標準化/構造化して管理・統合する入力支援システムを活用し、そこに蓄積された情報から使用成績調査に必要な情報を直接抽出するとともに、さらに必要となる情報を追加入力できる仕組みとなっている。これまでも、当該入力支援システムを臨床研究に活用する事例はあったが、使用成績調査に活用する事例はなく、システムベンダーと共に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との品質保証プロセスの相談を踏まえて新たな運用モデルを構築した。 【考察・結論】この仕組みにより、医療従事者によるデータ入力・管理の負担を軽減し、医薬品の安全性確保に重要な使用成績調査の質と効率を向上させ、関連する安全性情報を患者さんにより早く提供することに大きく貢献するものと期待している。この新モデルは、実臨床下の医療情報を使用成績調査へ活用する革新的なソリューションの一事例であり、広く業界に普及させることを目指している。【倫理的配慮】尚、新モデル構築の際に実際の臨床データは取り扱っていない。