[2-I-5-03] ベンダ変更を伴う電子カルテデータの移行の事例と、データの完全性担保に関する一考察
electronic health records, hospital information systems, data migration
【緒論】1970年代から診療情報の電子化を進めて以来、当院は50年近く膨大な量のデータを保有しており、本年初めてベンダ変更を伴う電子カルテリプレースを実施した。この際、旧システムから新システムへの安全かつ完全性を担保したデータ移行が大きな課題となった。【方法】データ移行は、1)旧ベンダによる旧システムからのデータ抽出とサンプルデータの提供、2)新システム側での取込プログラムの開発、3)移行前後での複数回による旧システムからのデータ抽出と新システムへの取込、と段階的に行われた。当初、新システムでも編集を可能とする互換移行対象の期間を直近13か月以内としていたが、作業に想定以上の時間がかかることがわかり、互換移行を6か月以内とし、2012年以前のデータをリプレース後に順次格納する案に変更した。【結果】これにより、予定されたシステム停止期間内にデータ移行を完了できた。一方、リプレース後、検査における部位などの付帯情報や予約枠、入外区分等が入れ替わるといった診療に影響を与えうるミスが多数発見された。これらの多くはデータ移行用の変換プログラムのバグやマスタの紐づけミスが原因であったが、一部は直前に移行方針を変更したことによる考慮漏れもあった。これらはプログラムやマスタを修正し再取り込みすることでほぼ解決したが、大半が現場からの通報により発覚したもので、ベンダ側でプログラムレビューを実施したにも関わらず発覚しなかったものもあった。【考察・結論】互換移行の範囲を限定したことで、安全にデータを移行できた。一方、移行作業ミスにより様々な障害が発生したことも事実であった。これらは、移行作業の中核を成すプログラムやマスタ開発が、担当者個人の属人的になることが主な原因であった。データの完全性確保には、ベンダと協力の上でこれらの問題を防ぐ手段を考慮することが重要であると考えられる。【倫理的配慮】なし
