目的：
　本研究は、サイバー攻撃によるシステム障害時における体制作りと、短時間でのシステム復旧を実現するための方法として診療継続の支援をするための緊急時簡易オーダーシステムの構築を目的とする。

方法：
　まず、バックアップデータからのシステム復旧時間を検証し、診療継続に必要となるデータ種別を洗い出した。次に、システム障害時対応手順の見直しを行い、外来・病棟に分けてシミュレーションを実施した。シミュレーション結果をもとに、体制の再構築および復旧プロセスの最適化を図るために緊急時簡易オーダーシステムを構築し、そのシステムに過去の院外処方箋内容が参照できる機能とそれを引用して新たに処方を発行できる機能を搭載した。最後に、このシステムを用いて再シミュレーションを実施した。

結果：
　バックアップデータからの復旧には、約12時間要することが判明した。迅速なシステム復旧においては事前の訓練と明確な役割分担が重要であることが明らかになった。 また、緊急時簡易オーダーシステムの利用により、手書きによる記入ミス・混乱を抑えることが可能であった。特に過去の院外処方箋の迅速な参照と新規オーダー機能により、処方ミスが減少した。

結論：
　緊急時簡易オーダーシステムは、サイバー攻撃等によるシステムダウン時における限られた資源の中でも機能するため、診療の継続に有効であることが確認された。本システム利用により、迅速かつ効率的に対応できるため、患者の安全性とサービスの質が向上することが期待される。また、サイバー攻撃対策の効果を高めるためには、職員の定期的な教育・訓練が不可欠であり、明確な役割分担と迅速な情報共有を可能にする連絡体制の整備が、混乱を最小限に抑え、短時間でのシステム復旧を実現する鍵となる。

倫理的配慮：
　電子カルテ委員会の承認の下実施し、所属長に発表の承認を得た。