一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-1-01] 病院の呼吸器・循環器患者の増悪に対するMEWSを用いた判定の検証

*前田 俊輔1,2、仁保 宏二郎1、阿波 明美1 (1. 医療法人芙蓉会 , 2. 社団法人 日本遠隔医療介護協会)

Medical support, Prevention of severity, Early Warning Score , Elder people, Vital sign

【目的】
肺炎等の呼吸器、心不全等の循環器疾患は、高齢者の死亡原因、入院原因の上位である。高齢者は加齢の影響でバイタルが変化し、個体内変動も大きくなるため、全員一律の絶対値基準では増悪検知が遅れる場合がある。従前の介護施設における検証では、相対値基準を用いた独自のMEWS(Modified Early Warning Score)による肺炎・心不全の増悪に対する検知精度厚生労働科学研究等で確認したが、バイタルが不安定な患者の多い病院では環境が異なるため、今回検証を行った。
【方法】
地ケア60床、療養190床の入院患者ごとに1週間以上の平常時の体温・脈拍・血圧の正規分布の平均値±2σを1点、±3σを2点、Spo2・呼吸数・意識レベルはNEWSと同設定としスコア合計値3点以上を赤、2点を黄、1点以下を緑とするMEWS搭載の『安診ネット』を用い、呼吸器・循環器疾患の増悪への検知を検証した。期間は2024年4月1日~30日、対象患者数は延べ285人、増悪を処方開始・処方変更・注射・点滴・酸素開始の有無とし、検査陽性をスコア3点以上、人月法で計算し、イベントは月1回まで、有効期間7日未満や看取り患者は対象外とした。
【結果】
延べ患者数は285人。検査陽性は36件、うち増悪した件数は33件(陽性反応的中率:91.7%)、増悪した全件数は38件で、呼吸器疾患が32件(肺炎:24件、新型コロナ:8件)、循環器疾患が6件(心不全:4件、高血圧:2件)であった。感度は86.8%、特異度は97.4%であった。偽陰性の5件(13.1%)のうち3件は、スコア2点と症状からの判断で、より早期に医療対応されていた。

【考察・結論】入院患者の呼吸器・循環器疾患に対する増悪に対し、本MEWSの検知は良好な成果であった。介護施設だけでなく、2週間以上の入院患者を持つ病院でも増悪の早期発見に繋がる可能性があることが示唆された。

【倫理的配慮】
患者の個⼈情報とプライバシーの保護に配慮し、家族から書⾯にて同意を得た。