一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-2-05] 離島における遠隔医療導入率と地域特性

*前田 愛礼1、中山 雅晴2 (1. 東北大学 医学部, 2. 東北大学大学院 医学系研究科)

Telemedicine, Remote Islands, Community Medicine

【目的】医療DXが全国的に進み、各地で様々な恩恵が生まれている一方で、へき地における医療確保の課題は今も根強く残る。特に地理的に遮断されている離島では、医療資源が乏しいだけでなく、本土の医療機関を受診する負担も大きいため、遠隔医療を含むICTの積極的な活用が期待されている。しかしながら、これまでに日本の有人離島全てを対象とした遠隔医療に関する研究は少なく、現状を把握することが困難であった。本研究では、離島の遠隔医療の現状を把握し、地域特性との関係を明らかにすることを目的に調査を行った。
【方法】公開情報をもとに全国の有人離島の遠隔医療を導入している医療機関数と地域特性(人口、人口密度、100人あたりの医師数)を調べ、ピアソン相関分析を行った。また、遠隔医療を導入している島の割合を人口規模や都道府県別に分析した。
【結果】遠隔医療を導入している医療施設数と人口の間に有意な正の相関が見られた(r=0.73, p<0.05)。遠隔医療を導入している島の割合を分析したところ、人口5000人以上の大規模離島では70%だったが、5000人未満の小・中規模離島では20%前後だった。都道府県別の分析では導入率が0~100%と大きな差が見られた。
【考察・結論】都道府県別での離島の遠隔医療導入率に差異が見られたことから、各県で離島医療に対する取り組み方が異なることが示唆された。また、遠隔医療を導入している医療施設数と人口の間には正の相関が見られた一方で、遠隔医療を導入している島の割合を人口規模別に分析すると、小・中規模離島の遠隔医療導入率が大規模離島と比較して非常に低いことが確認された。医療資源が少なく、島内で医療を完結させることが困難な小・中規模離島ほど遠隔医療の活用が望まれるため、全国で支援体制の構築が求められる。
【倫理的配慮】公開情報をもとに調査したため、倫理委員会の承認は必要ない。