[2-J-5-01] 大規模DPCデータを用いた脳梗塞患者の重症度別の入院期間推計の試み
DPC data, ischemic stroke, health technology assessment
【背景・目的】 医療技術の費用対効果を分析する際には、健康状態(重症度)別にパラメータを推計し、医療技術の導入による重症度改善の影響を反映させることが求められる。その際、特に入院期間などのパラメータは日本と海外で大きく異なる場合があり、海外エビデンスの参照が困難な場合がある。レセプトデータなどの通常用いられるデータでは重症度の把握が困難であるなど一定の課題がある一方で、DPCデータでは一部の疾患については重症度と紐づけた分析が可能である。そこで本研究の目的は、大規模なDPCデータを用いて、脳梗塞患者を対象に重症度別の入院期間を推計することとした。【方法】病床数ベースで愛知県内のDPC対象医療機関の93%以上を網羅するDPCデータの2019年度分より、「医療資源を最も投入した傷病名」や「入院の契機となった傷病名」が脳梗塞であり、かつDPCデータ子様式の変更があるなどの条件を満たす患者741例を、急性脳梗塞発症後に回復期までの一連の治療を受けた症例とみなし、データを抽出した。その後、入院時点で発症から4日以上経過していた者を除外するなどの処理を行った上で、退院時mRS別に入院期間等の集計を行った。【結果・考察】退院時mRS0-5別の患者数はそれぞれ45、81、76、65、39、16人であり、入院期間はそれぞれ61.6±34.3、52.8±30.7、64.2±32.1、71.2±42.1、83.1±45.1、および86.2±45.6日であった。また、費用対効果分析で一般的に用いられる区分であるmRS0-2(軽症)およびmRS3-5(重症)の症例では、入院期間はそれぞれ59.0±32.3、77.1±43.6日であった。以上より、入院期間は重症度が低い場合には短い傾向が示された。今後は症例数を増やし推計の制度を高めることや、他の疾患等へ応用が望まれる。
