【目的】僻地診療所を支援する診療所電子カルテ開発が内閣府研究開発事業等で求められているが、僻地診療所の電子カルテ利用環境の現状を把握する情報は少ない。本研究では、僻地診療所に特化してアンケート調査を実施し、その電子カルテ利用環境を分析する。
【方法】記名自記式調査、記名、郵送依頼、郵送・Webフォーム・FAX選択回答方式とした。対象は厚生労働省の定義によるへき地診療所と過疎地域特定診療所1116である。質問項目は、診療所プロフィール、主要な保有診断機器、検査検体回収頻度、検体検査結果返却方法、院外処方割合、電子カルテ使用、紙カルテ併用、電子カルテベンダー、医事会計システムベンダー、レセプト請求状況、オンライン資格確認、ベンダーサポート体制、インターネット接続環境、患者スマホ利用割合印象、データ二次利用希望、システムランニングコスト、将来への期待機能、電子カルテ未導入病院における電子カルテ希望感、利用可能コスト感、などとした。
【結果】342診療所から回答があった（回答率31%。うち、Web回答58%、FAX回答38％、他4%)、検体回収は週1が19％、週2-4が28％、週5が32％。オンライン結果返却は36%であった。また、電子カルテ62%(うち、紙カルテ併用38%)。医事会計85%、電子レセプト89%、オンラインサポート88%、オン資確認92%、有線インターネット78%、無線インターネット18％（以上、導入率）。将来への期待機能としては、AIによる各種機能が40％を超えた他、オンライン診療通話システムが46％、患者報告アウトカムシステム36%であった。
【考察・結論】電子カルテをはじめとするIT化は一般診療所全体の既存統計結果と同程度かそれ以上であり、オンライン診療やAIへの期待が大きかった。今後、この調査結果も参考にして僻地診療所用電子カルテのあり方を検討する。
【倫理的配慮】該当しない。