一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-6-02] ブロックチェーン技術を用いた単一医療機関向け診察記録システムにおけるデータの整合性確保

*吉田 晃章1、五味 悠一郎2 (1. 日本大学 理工学部 応用情報工学科, 2. 日本大学 理工学部)

Block chain, Medical records, Data integrity

医療機関が保持する膨大なデータは,分散型台帳システムであるブロックチェーン技術を用いることで信頼性を担保することができ,セキュアでダウンしにくいシステムを構築することができる.データは複数の医療機関で共有することが望ましいものの,合意形成や機密性確保が難しいため,単一医療機関内でのデータ共有から始めることで導入が簡単になる.先行研究では,ブロックチェーンの根幹であるデータの整合性を高めるシステムを構築した.しかし,「テンポラリ方式におけるチェーンファイルとテンポラリファイルの不整合問題」や「最長チェーンを有するサーバが一時停止している間にほかのサーバが最長になると記録されていたチェーンの一部が上書きされてしまう問題」が生じた.本研究では,ブロックチェーンシステムにおけるデータの整合性を確保するため,チェーンの最終ブロックのハッシュ値を各ブロックに含めたことで,独立しているテンポラリファイルとチェーンファイルの高速な整合性チェックが可能となり,チェーンファイルからテンポラリファイルの復元も問題なく行えることを確認した.この改変により,「テンポラリ方式におけるチェーンファイルとテンポラリファイルの不整合問題」を解決した.さらに,「最長チェーンを有するサーバが一時停止している間にほかのサーバが最長になると記録されていたチェーンの一部が上書きされてしまう問題」は書き込みが完了したと同時に,書き込んだ内容,NTPサーバから取得した時間データ,最長チェーンを保有するサーバのログを他のサーバに送信することで,データの整合性を保つことが可能となり,チェーンの一部が上書きされてしまう問題を解決した.以上,2点の問題を解消することで自サーバと他サーバとの整合性を保つことができ,ブロックチェーンの強みである改ざんされにくいシステムを構築することができた.