一般社団法人 日本医療情報学会

[3-B-5] 変化するこの時代に医療情報学会が育成するべき人材とは?

*中島 直樹1、谷川 琢海2、白鳥 喜宗3、岡田 美保子4、武田 理宏6、脇 嘉代5、小笠原 克彦7 (1. 日本医療情報学会医療情報総合戦略研究部会/九州大学、2. 日本医療情報学会医療情報技師育成部会長/北海道科学大学、3. 医療技術実用化総合促進事業Real World Evidence 創出のための取組み「臨中ネット」WG長/名古屋大学、4. ICH M2 共同チェア、ISO/TC215 WG11国内作業部会主査/一般社団法人医療データ活用基盤整備機構、5. 日本医療情報学会教育委員長/東京大学、6. 日本医療情報学会学術委員長/大阪大学、7. 日本医療情報学会代表理事/北海道大学)

Human Resource Development, Information Security, Healthcare DX, RWD secondary Use, International Standardization

日本医療情報学会(JAMI)は1983年に設立され、日本の医療情報学を牽引してきた。また、2003年には医療情報技師育成部会を発足し、現場に携わる医療情報技師を約3万人認定してきた。これらは時代が変わっても、学術学会として揺るぎないコア活動であり続けるだろう。
一方、その間に日本ではバブル経済を経て「失われた30年」と呼ばれる長い低迷が続き、超少子高齢社会を迎えて、格差社会が生じている。東日本大震災を代表とする数々の自然災害を被り、2020年からは新型コロナのパンデミックに悩まされた。2022年からはウクライナやガザ地区で火力抗争が勃発し石油、食料、半導体などの流通に影響を及ぼしている。
情報社会においては1990年代にインターネットが勃興し、PCに続いてスマホが普及してきた。2010年代からは「ビッグデータ活用」「DX」が期待され、深層学習、特に生成AIが台頭してきた。近年は医療施設のランサムウエア被害も報告されるなど負の側面も目立つ。
そのような激動の日本社会において、医療領域では2000年代には電子カルテ、2010年代にはPHRの普及が始まり、医療DXはキーワードとなり、政府主導の医療DX政策が進められてきたが、そのいずれもが必ずしも充分な成果を上げているとは言えない。
2024年6月の第28回日本医療情報学会春季学術大会(千葉)の緊急企画「医療DX 推進体制整備加算・診療録管理体制加算がもたらすインパクト」では、JAMI学会員や医療情報技師の活動の場を、従来の自施設・自企業という「点」から、地域・社会という「面」へ拡大することが提唱された。本企画ではこの議論を受け継ぎ、1)地域社会における医療DX政策や情報セキュリティ実装への支援、2)健康・医療領域に蓄積するリアルワールドデータの活用支援、3)日本発の医療情報規格の知財化やビジネスモデル化を軸とした国際標準規格化推進、の三軸で人材育成・活用を進めることの重要性について議論し、JAMIの役割を再考したい。