[3-C-5-02] 慢性腎臓病患者の尿中Na排泄量に対する高血圧治療アプリの効果-非盲検ランダム化比較試験–
Smartphone app-based interventions, chronic kidney disease, salt restriction
過剰な塩分摂取は慢性腎臓病(CKD)進行の重要な危険因子である。しかし、CKD患者のリアルワールドデータによると、CKD患者の大半は推奨量を上回る塩分を摂取している。近年、生活習慣の改善を支援するスマートフォン治療用アプリの効果が注目されており、CKD患者の塩分制限にも有用かもしれない。本ランダム化比較試験では、腎臓内科専門医外来で治療を受けているにもかかわらず尿中ナトリウム排泄量が高値のCKD患者における、高血圧治療補助アプリCureApp HTの塩分制限に対する有効性を評価した。対象は、高血圧既往があり、田中式による推定24時間尿中ナトリウム排泄量100 mmol以上(塩分換算約6g以上)のCKDステージG1-G5の症例とした。介入期間は12週間であり、12週間の後観察期間を設けた。全体で101例をエントリーし、介入群(アプリ使用と腎臓内科医による生活習慣指導)または対照群(生活習慣指導のみ)にランダム化した。対照群に比し、介入群では塩分摂取行動が『大幅に改善した』または『ある程度改善した』と自己評価した患者の割合が有意に高かった(76% vs. 40%、P<0.001)。しかし、主要アウトカムである推定24時間尿中ナトリウム排泄量の変化には有意な群間差を認めなかった。副次アウトカムである血圧、脈波伝達速度、尿タンパク・クレアチニン比、推算糸球体濾過量、脳性ナトリウム利尿ペプチドにも群間に有意差を認めなかった。この結果の原因の一部には、塩分制限の重要性を理解しても実行するための現実的な選択肢が乏しい生活環境が挙げられる他、塩分摂取という脳内報酬系と密接に関与する行動を変容させることの難易度が他の生活習慣と比して高いことが考えられる。
