Japan Association for Medical Informatics

[3-D-1-04] 国内2病院の比較に基づく臨床検査の保険請求時査定基準の曖昧性の検証

*Yuko Sekiya1, Goshiro Yamamoto2, Satoshi Kato1, Akari Suda1, Kenji Suzuki3, Tatsumi Kusakabe4, Akira Endoh4, Tomohiro Kuroda2 (1. 合同会社 H.U.グループ中央研究所, 2. 京都大学医学部附属病院, 3. 株式会社エスアールエル, 4. 北海道大学病院)

Examination guidelines, Multi-institutional comparison , Criteria for assessing insurance claims

厚生労働省は2017年から審査支払機関改革を掲げ、都道府県間及び組織間における審査結果の不合理な差異の解消に関する取組を進めている。2021年9月には社会保険診療報酬支払基金はレセプト審査を行うための新システムを導入し、その一部にAIが取り入れられたことで注目を集めている。本研究では、新システム導入による改善について評価することを目標としつつ、まず導入以前の査定結果について、審査基準にどの程度の曖昧さがあるのか検証した。
臨床検査は疾患の診断やモニタリングのために実施されるのが一般的である。そこで本研究では、京都大学医学部附属病院および北海道大学病院の保有する診療報酬請求(レセプト)から抽出したデータを用いて、レセプト病名から査定結果を予測する機械学習モデルを作成し、互いの病院のレセプト病名から審査結果を予測できるか検証した。さらに、SHAP法を用いて予測モデルから査定ルールを抽出し、病院間での比較を行った。
2018年3月から2019年2月までの期間におけるレセプト審査結果のうち、査定件数が50件以上の検査は24項目であった。病院毎に査定予測モデルを作成し、それぞれの病院で高い予測精度を示した項目を相互に比較することで、E2やHBs抗体などのように、他病院データでは予測精度が低下する項目があることが確認された。それらの項目において、抽出した査定ルールを病院間で比較したところ、病院によって査定されるレセプト病名が大きく異なっていた。
以上の結果より、機械学習モデルによる推定ではあるものの、判定結果の差異から査定基準に曖昧さが含まれる可能性を示せた。しかしながら、査定基準の段階だけでなく、病院からの請求方法にも違いがあるとみられており、総合的に査定結果に差異が生じていると考えられる。今後、新システム導入後の時期でも同様の検証することで、審査結果の不合理な差異の改善状況に関する前後比較を行う。