一般社団法人 日本医療情報学会

[3-D-2] 次世代医療基盤法を活用した医療データの利活用の促進と現状、その課題

*藤井 進1,2,3 (1. 東北大学、2. 慶應義塾大学大学院、3. 東北大学病院)

2018年に施行された次世代医療基盤法が改正され、新たに仮名加工医療情報が加わった。またNDB等の公的データベースとの連結も可能となり、いよいよ医療データの利活用環境が整いつつある。患者への通知は必要なものの、個別の事前同意は不要で適正に利用できること、管理施設を跨って名寄せされたデータを活用できる意義は大きい。しかし研究機関を要する大学病院の一部では対応を始めているものの、まだ多くの医療機関で協力を得られているとは言えない状況である(令和5年12月末で医療機関・自治体数は118件)。また利活用事例も令和5年12月末で37件(※内閣府健康・医療戦略推進事務局資料より)と、6年間の実績と考えると少ない。まず研究機関以外の施設にとっては、協力することのインセンティブが少ないこと。大学病院等であっても、通知にかかる準備費用や運用に係る業務負荷の増加などから検討段階に留まるところも多い。また研究利用するにも、匿名加工医療情報が源データと比較して研究結果に及ぼす影響がわからない。データもいわゆる標準化がされていないことも原因であろう。このような背景から次世代医療基盤法による医療データの利用が進んでいない。しかし事前同意が不要なことや公的データベースとの連結、複数施設の名寄せされた医療データは魅力あるデータには違いない。本シンポジウムでは、(1)次世代医療基盤法の理解、(2)患者への通知実態と業務負荷の現状、(3)次世代医療基盤法での倫理審査の理解、(4)匿名加工医療情報を使った研究例、(5)研究目的以外の活用方法の模索と医学研究における匿名加工医療情報・仮名加工医療情報と源データと比較(研究結果への影響)、(6)匿名/仮名加工医療情報を使ったRWDの現状と期待について有識者や実務者から報告してもらい、次世代医療基盤法の導入や利用の是非を検討している施設や研究者に有用な情報を提供する。