一般社団法人 日本医療情報学会

[3-D-5-01] 遠隔医療に対する診療報酬の動向
- 令和6年度診療報酬改定の話題-

*長谷川 高志1、近藤 博史2 (1. 日本遠隔協会、2. 協立記念病院)

Telemedicine, Health technology assessment, Medical fees schedule

令和6年度診療報酬改定では遠隔医療に関する評価の新設増設が多かった。ただし学会要望の採択件数は例年より少なく、制度に働きかける手法には課題が残る。そこで遠隔医療で診療報酬を要望する際の観点を紹介する。第一に遠隔医療のシステム等のコストは評価対象ではなく、医療行為への技術評価が重視される。第二に同じ疾患への対面での診療報酬があれば、遠隔医療の診療報酬はその点数を下回る。対面診療よりも医療技術上で評価が低いのでやむを得ず、高額なシステムを用いても評価されない。
支給対象を施設基準の指定等で厳密に絞り込むので、硬直的になりやすく、例えばへき地医療への診療報酬なのに、該当地域で算定できないことも起こる。同様に対象者への制約もあり、他職種業務でも医師への加算となる事例がある。臨床研究結果がエビデンスと限らず、社会的データが重視されることも注意を要する。また臨床研究であれ、評価対象がずれれば、エビデンスと扱われない。エビデンスと考えるより、根拠説明の情報と考えるべきである。遠隔医療関係者は思考法の転換が求められる。
 それらを前提に、令和6年度改定に於ける代表的な改定を紹介する。特定集中治療室遠隔加算(遠隔ICU)、在宅持続陽圧式呼吸療法指導管理料に於ける情報通信機器を用いた診療(情報通信機器を用いた疾病管理)、看護師等遠隔診療補助加算(DtoPwithN)、難病患者の遠隔連携診療料(DtoPwithD)、情報通信機器を用いた通院精神療法、在宅透析に係る遠隔モニタリング、脳卒中救急遠隔医療の加算や遠隔連携診療、情報通信機器を用いた診療のモラルハザード対策、遠隔死亡診断の補助などについて、評価の新設や見直しが行われた。また情報通信機器を用いた歯科診療も評価が一気に新設された。遠隔医療の推進方策は、規制改革による手法から、通常の制度や政策に関する手法にシフトしている。