一般社団法人 日本医療情報学会

[3-D-5-04] 精神科領域におけるオンライン診療のエビデンス構築の経過と利用促進に向けての考察

*岸本 泰士郎1,2 (1. 慶應義塾大学医学部、2. Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/Northwell)

psychiatry, telemedicine, non-inferiority trial, reimbursement

互いの顔を見ながらの会話が診療の大部分を占める精神科診療は、オンライン診療になじみやすい診療領域と言える。しかし、急速な利用拡大や質の低下に対する懸念等、慎重意見も強く、令和4年度の診療報酬改定においては、当該領域における診療報酬の核となる「通院精神療法」の加算が見送られていた。日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として令和2年度から4年度にかけて行われたオンライン診療の非劣勢試験(通称J-PROTECT)によって、本邦の臨床現場における、対面診療に比したオンライン診療の非劣性が証明された。J-PROTECT試験を経て、令和6年度の診療報酬改定では、オンライン診療でも通院精神療法が算定可能になった。しかし、初診においては通院精神療法が算定できない、再診においても算定できる医師や医療機関が限られるなど、限定的な導入となっている。オンライン診療は、離島・へき地医療といったニーズに加え、不安や意欲低下などから受診が困難、スティグマのために精神科受診を知られたくない、など精神科領域特有のニーズにも対応可能である。特に、「引きこもり」状態に至っている患者は、受診が著しく困難であり、患者会も初診からの利用を強く求めている。一方で、睡眠薬の安易な処方といった例も散見され、診療の質を保ちながら、どのように利用促進を図るべきなのか議論が行われている。発表では、J-PROTECT試験結果の概要を報告するとともに、今後のオンライン診療の理想的な普及に向けてどのような議論が行われているかレビューする。