一般社団法人 日本医療情報学会

[3-D-5-05] 保険収載された遠隔医療分野の現状と将来
ー遠隔ICUにおける保険収載上の課題と今後の対策 ―

*高木 俊介1 (1. 横浜市大医学部附属病院 集中治療部)

Tele-ICU, Human factor, Maintenance costs, Operation system

令和6年度の診療報酬改定において、「特定集中治療室遠隔支援加算」(以下、遠隔ICU加算と称する)が算定されることとなった。新設された診療報酬であり、今後の本邦での遠隔ICUの普及や加算の算定状況を踏まえて、適切な診療報酬要件の修正要望をしていく必要がある。現状、遠隔ICU加算における課題は①コスト②人的要員③運用体制の3つが挙げられる。①コストの観点としては、遠隔ICU加算により該当患者1人あたり980点/日が被支援施設側に算定されることとなる。被支援施設と支援側医療施設との間で診療報酬による収入を按分することとなる。遠隔ICUは施設整備費、人的費用、システム保守費用、ネットワーク費用等が生じるため、適切な費用配分が求められる。②人的要因として患者のモニタリング要員の課題がある。特定集中治療の経験を5年以上有する医師又は集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験5年以上を有し、集中治療を必要とする看護に係る適切な研修を修了した看護師が患者のモニタリングを常時行う必要がある。これらの人的配置には数的課題と資格要件の課題がある。現状の要件では患者30人に対してモニタリング要員1名が必要であり、30人を超えた段階から2名の配置が必要となる。モニタリング要員の資格を満たした医師又は看護師を24時間365日支援側医療施設に配置することは1名でも困難であり、本邦において持続可能な要件への見直しも検討が必要である。③運用体制の課題として、遠隔ICUという多施設多職種が関わる事業を持続する困難さがある。被支援施設に対する教育、臨床的支援、組織体制の構築などを行う必要があり、従来の医療施設にいる事務職に求められる業務とは異なり、プロジェクトマネジメントオフィスとして事業に伴走する役割が求められる。上記の3つの課題を整理して、普及が可能な遠隔ICUのあるべき姿を提案していくことが必要である。