[3-E-1-01] 医療情報の利活用促進に係わる制度整備の動向
Clinical Information, Personal Data Protection Act, Next Generation Medical Infrastructure Law, Anonymized data, Pseudonymized data
2005年に初めて施行された個人情報保護法制は、1)保護への偏り、2)情報取得主体によって異なる扱い、3)個人情報の定義の曖昧さ、4)不十分な悪用防止策、5)海外の制度と不整合、6)同意偏重の入口規制、等様々な問題点が指摘されてきたが、2015年改正によって、要配慮情報に指定された医療情報の利活用は抑制的になったが、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)によって条件付きではあるが、オプトアウトによる利活用の道が開かれ、令和2年個情法改正では仮名加工情法の概念が導入された。また令和3年改正では医療介護情報の扱いに関して、公的機関と民間機関の取扱の統一が図られようとしている。いわゆる2000個問題への対応である。さらに令和5年に次世代医療基盤法が改正され、仮名加工医療情報の導入と認定事業者の提供するデータにNDB等の公的DBと突合可能な識別子の追加が盛り込まれた。また現時点で個人情報保護法制の3年毎の見直しの議論が進められている。プライバシー保護と公益目的の医療健康情報の利活用は各国共通の課題であり、我が国のこれらの制度の改定や改正の議論は個人情報の保護を図りつつも利活用の推進に焦点をあてたもので、このような緩和の方向性は当然とも言える。EUにおけるEHDSの議論も含めて医療情報の価値を追求する研究者にとって、このような制度的対応には無関心ではいられない。EUやUK NHSのcare data議論も含めて、改正次世代医療基盤法、個人情報保護法制の見直し議論を概説し、医療情報を取り扱う立場から議論を深めたい。
