Japan Association for Medical Informatics

[3-E-1-04] 深層学習を用いた湿性・乾性咳嗽音の分類手法の構築

*Kazunori Nozaki1, Nami Fujii2, Nohara Kanji2, Ueda Akihito3, Hamada Masahiro2, Obana Aya2, Matsumura Erika1, Sakai Takayoshi2 (1. Osaka University Dental Hospital, 2. Graduate School of Dentistry, Osaka University, 3. Medical Corporation Tojinkai, Fujitate Hospital)

Cough sound, Deep learning, Aspiration pneumonia

誤嚥量が多いと誤嚥物の排除のために分泌や痰が増加し、湿性咳嗽を呈する場合がある。湿性咳嗽は下気道の過分泌を反映することが知られており、これまで乳幼児において湿性咳嗽が肺炎リスクと関連していることが報告されている。嚥下臨床の現場において、誤嚥性肺炎の発症回避は重要な課題であり、高齢者においても咳嗽音の質の判定がその一助となる可能性がある。しかし、現状では咳嗽の判定は医療従事者の専門性や経験に依存しており、客観的な分類技術が求められている。

本研究では、音声合成に用いる音声特徴抽出方法を組み合わせて咳嗽特徴マップを作成し、深層学習を用いて呼吸器内科医師による湿性・乾性咳嗽の分類を高精度で再現する自動分類システムを構築した。最も高い精度を示した指標はbap(帯域非周期性指標)であり、これは各周波数帯における雑音率の高さを示すものである。湿性咳嗽における分泌液の存在が低周波数帯の雑音成分を減らす一方で、高周波数帯の雑音成分には影響を与えないという現象を反映している可能性がある。

今後、本研究で開発した咳嗽音分類システムを基に、誤嚥性肺炎の発症率の推測や呼吸器疾患スクリーニングなど、多様な応用を試みる予定である。本システムは、現場の診断における医療従事者の負担軽減や、診断精度の向上に寄与することが期待される。