一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-2-04] 病院の医療情報インフラ管理/運用の限界と理想

*油谷 曉1 (1. 京都大学医学部附属病院)

病院の医療情報システムは患者さんの生命に関わる基幹システムであり,様々なネットワーク技術を駆使した情報インフラ基盤上で管理/運用されている.医療情報システムの構成としては,電子カルテシステム,部門システム,オーダリングシステム,検査システム等,様々なシステムが情報インフラを使用して有機的に結びつくことで機能している.

医療情報システムの病院内での構築は,セキュリティを考慮して完全独立させることが理想ではあるが,外部病院との情報連携,各医療情報システムの院外資源への参照/共有の必要性,日々メンテナンスの容易性などから,必要最小限で外部アクセスを認める構成で運用する必要があり,FW (ファイアーウォール) や DMZ (非武装地帯) の構築,ベンダーメンテナンス用 VPN の運用を行っているのが実情である.

これらの情報インフラ環境は,安定的な運用を行っていく必要があるが,サプライチェーンからのランサムウェア攻撃を含むサイバー攻撃全般を考慮した外部接続点の防御など,院内構成員で全ての運用を行っていくには限界があると感じており,外部の専門業者 (外部 SOC) の 24/365 運用サポートを受けるのが理想である.ただ,相当高価な出費とサイバー攻撃未遂以上でないと有効に機能しないことを考慮すると,定常状態において情報インフラの状態を可視化等でリアルタイムに把握するためのツールの必要性,そして,何が分かり何を防げるのかを考えてみたい.

最後に,持論ではあるが,情報インフラの媒体は複数必要無いと考えており,これまで,有線,無線 (Wi-Fi, Bluetooth, 4G (5G)) インフラを利用しているが,既に携帯電話の電波は各所隅々にまで届いていることより,「もう有線はいらない,情報インフラは 5G のみ,院内への設備投資は無し」の方針で,病院特有の環境構築と運用を 5G 提供事業者に全て委ねる時代が早く来ないかと考えている.