一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-4-03] 臨床研究におけるJASPEHRの活用

*岡村 浩史1 (1. 大阪公立大学医学部附属病院)

臨床研究のデータ収集はカルテからEDCにマニュアル転記する方法が一般的であり、臨床現場の業務負担、転記ミスによる研究の質低下といった問題が指摘されてきた。近年、電子カルテからデータ連携し臨床研究データを収集する取り組みに期待が集まっている。一方で、多くの臨床研究で必要される疾患重症度、ステージ、治療効果、臨床転帰といった内容は自由記載文として電子カルテに記載されることが多く、標準化された構造データとして蓄積されないが故、自動収集することが難しい現状があった。そこで、臨床業務にも臨床研究にも共通して必要な項目については、構造データとして収集できる各施設共通の電子カルテテンプレートに入力する運用にすることで、「臨床業務の運用」と「収集データ」の両者を標準化することが可能となり、その結果研究用データの収集も効率化される。
JASPEHRは、医療情報の国際標準規格であるHL7 FHIRのQuestionnaireリソースを用いて研究プロジェクト個別のテンプレート仕様を定義することで、電子カルテ関連ベンダーに依存することなく共通したテンプレートの自動構築を可能にし、「臨床業務の運用」と「収集データ」の標準化という両目的に対し、高い汎用性と効率性が期待される仕組みである。このように、ベンダーに依存しない「臨床業務の運用」と「収集データ」の標準化に対して同様のニーズがある医療場面として、「レジメン」と「パス・臨床試験」の運用があげられる。どちらも、個別の施設に関わらない共通定義に基づく臨床運用が求められると共に、マスタの標準化によりデータ収集作業の効率化・自動化が可能となる。
本発表では、診療現場と臨床研究におけるニーズと課題を整理し、JASPEHRのコンセプトをレジメンやパス・臨床試験などに応用することで、さらに医療DXを発展させる可能性とその課題について提示・議論する。