一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-4-07] JASPEHRシステムの医療DXでの活用と展望

*星本 弘之1,2 (1. 国立国際医療研究センター、2. 国立高度専門医療研究センター)

政府が推進する医療DXにおいて、電子カルテ情報などのリアルワールドデータ(RWD)の臨床研究や治験での活用することが期待されている。しかし、電子カルテに記録されている臨床情報のうち、検査・処方・病名などの構造化データは比較的取得や再利用が容易であるが、患者の状態を詳細に把握するために必要となる患者の主訴や医師による所見、あるいは薬剤などの副反応などはカルテの記事として自由記載されている場合が多く、これらの情報を収集するには人手に頼る部分が大きい現状がある。さらに、医師などの記録者にとって常識や当たり前の内容については記載されていない場合もあり、これらがRWDを活用する上での一つの障害となっている。これについて、我々はテンプレートの活用により必要な情報や項目の入力を促すとともに、出力されるデータ形式の統一を図る目的から、電子カルテベンダーに依存しない共通テンプレート(以下、JASPEHRテンプレート)により臨床情報を収集するシステムを構築するJASPEHRプロジェクトを推進しており、その成果は、現在までに難病ゲノム・がんゲノムでの臨床情報収集に適用されている。本セッションのうち、官の立場からの報告としては、来年度発足する国立健康危機管理機構の基幹業務の一つとして我々が推進している感染症の水際サーベイランスや治験・臨床研究ネットワーク構築事業におけるJASPEHRテンプレートの活用について報告を行う。さらに、厚生労働省が構築している電子カルテ情報共有サービスや感染症発生届などの情報入力手段の一つとしても検討されていることから、医療DXにおけるJASPEHRプロジェクトの展望などについて説明する。