一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-5-02] 生涯の疾病管理・健康管理としてのPHR

*前田 正信1 (1. あいち小児保健医療総合センター)

母子健康手帳は出生前からの妊娠履歴及び出生後の乳幼児までの健康状態・予防接種歴・成長の記録が残されており、生涯健康手帳の始まりでもあります。先天性心疾患患者は出生100人中1人ほどの発生率で、その診断・治療・手術等を記録しておくことは、その後の成長・学校活動・社会生活において重要な情報となります。健康な子供でも健康状態を記録しておくことは病気の予防、疾病の罹患の経過をPHRに残すことは医療機関と個人の情報共有に大きな役割を担うものと考えられます。先天性心疾患手術後の経過は成長に伴って合併症の併発や、再手術を要するものもありますが、95%以上が成人期を迎えて良好な社会生活を送っています。小中高生の時期での多くは小児科を主とした医療機関に定期通院しておりますが、大学・就労では成人循環器科でのフォローに移行します。活動範囲が遠隔地あるいは海外に変って行くことも少なくなく、自身の薬歴及び医療記録を、移行する医療機関に情報共有する必要が生じます。過去の手術歴・病歴・薬歴などは閲覧できることが大切であり、デジタル保存が望まれますが、紙カルテ情報や紹介状などは写真「のこすけん」(情報保存アプリ)などに保存しておくことで有用な情報となります。現行の診療記録は、電子カルテからの「標準化されたデジタルデータ」、あるいは「マイナポータル」からPHRに取り込むことが望まれます。病診連携、病病連携にPHRがかかわることでスムーズな連携ができ、有用な役割を担うことになります。今後電子処方箋が主体となる方向性が示されておりますが、患者さんに寄り添った形の「かかりつけ薬剤師」がPHRを介した医薬連携で大きな役割を示してくれるものと考えられます。健康人でも健診データ、マイナポータルからの情報、自身のヘルスケアデータの集積などを集約して健康維持の方向性をAIにより示唆できるようなPHRを目指していきたいと考えます。