[3-G-2-01] COVID-19パンデミックが外来受診へ及ぼした影響の検証:時系列解析によるインパクト推定
COVID-19, Utilization of Health Services, Time Series Analysis, Disease Management, Delivery of Health Care
【目的】COVID-19の感染抑制のための行動制限は医療受診の抑制を引き起こし,将来の健康や疾患の状態に影響を及ぼした可能性がある.本研究では,全国健康保険協会のレセプトデータを二次利用し,COVID-19パンデミックが日本全国の外来受診へ及ぼした影響を時系列解析にて検証した.【方法】本研究の対象は,パンデミック発生前の2015年4月から発生後の2021年12月(発生は2020年3月と定義)までの期間中,全国健康保険協会に継続加入していた被保険者である.ICD-10大分類にもとづき,外来の受療率(1,000人月単位)を性・全傷病もしくは各傷病・県別に集計し時系列データを作成した.パンデミック前のデータで季節性を加味した自己回帰モデルを学習し,パンデミックが存在しなかった場合の反実仮想的な値を求め,観察値との差でパンデミックの影響を推定した.また,県別の各月感染状況をCOVID-19の罹患率で三分位化し,各分位におけるパンデミックの影響をプーリングし推定した.【結果】分析対象は男性5,826,233人(48.3±10.7歳),女性2,971,364人(48.4±11.1歳)であった.全国・全傷病の受療率は,男女共にパンデミック初期で有意かつ最も低下しており(男:−11.4%(95% CI:−14.8 to −8.0),女:−17.7%(95% CI:−21.6 to −13.8)),その後緩やかに回復していた.パンデミック初期に受療率が低下しその後回復傾向にあった傷病と,全期間に渡って受療率が低下したままの傷病があった.受療率は感染レベルが高い地域で低下する傾向にあり,パンデミック初期に女性で顕著だった.【考察】レセプトデータを利用し,性・地域・傷病・時期が受療率の低下と関連していることを示した.本研究は,パンデミック時における各傷病に応じた医療サービスの提供のあり方を見直す必要性を示唆しており,レセプトデータを利活用することで,状況把握だけではなく政策的な示唆を得るための検討が可能である.【倫理的配慮】本研究は,東京大学倫理審査専門委員会(審査番号:23-122)により承認されている.
