Japan Association for Medical Informatics

[3-G-4-03] EUのAI法・EHDS法から我が国の医療情報政策への示唆

*Takanori Fujita1,2,3,4 (1. 筑波大学 人文社会ビジネス科学学術院, 2. 慶應義塾大学 医学部, 3. 名古屋大学 情報連携推進本部, 4. 東京財団政策研究所)

Health Policy, AI Act, European Health Data Space, Consent

【目的】2024年5月21日、EUのAI法が成立した。また、2024年4月24日にはEuropean Health Data Space(EHDS)法案が欧州議会の承認を受けている。これら法律は、2024年中には発効し、2026年には施行される。近年、ブリュッセル効果と呼ばれるように、EUの法律が世界のルールの標準に大きな影響を及ぼしている。EUのAI法やEHDS法も日本に対して一定の影響を与えるものとみられる。本報告では、こうしたEUの新しい法律がどのように日本の医療情報政策に影響を与えるのか、どのような点を参考にすべきかといったことに関して考察する。 【方法】まず、EUのAI法とEHDS法の内容に関して確認をする。その上で、国内外でどのような法政策上の議論が特に医療情報政策と関連してあるのかの整理を行う。 【結果】AI法に関しては、リスクベースアプローチをとっている点に特徴があり、医療に関しては規制の例外としての位置づけとなっている点がポイントである。EHDS法に関しては、2024年6月24日現在、法案のさらなる修正の可能性があるが、概ね、データの一次利用、二次利用に目的を分けた上での適法な取り扱いルールを設定しており、一部AIの活用にも触れた規定が存在する。法案提示後、特に一般データ保護規則(GDPR)への適合性と、オプトアウトを含めた同意の必要性が議論となった。 【考察・結論】AI法への日本の対応はガイドラインなどのソフトローで十分なのか、立法(ハードロー)が必要なのかの議論がある。また、EHDSに対応する形での立法や、個人情報保護法の次回改正で同様の必ずしも同意によらない医療情報の適法な利活用ルールの設定を期待する声がある。我が国の医事法は、デジタルを前提とした体系とはなっていない。次世代医療基盤法によってカバーできる部分もあるが、立法するのであれば、AIの活用も含め医療情報全般に対応する抜本的な法整備を期待する。 【倫理的配慮】本研究は個人情報は取り扱わず、研究倫理審査の対象となる研究でもない。本研究にあたってはその他の研究倫理上必要な配慮の上実施している。