Japan Association for Medical Informatics

[3-G-5-04] 心房細動患者を想定した3次元心房モデルにおける興奮伝播ダイナミクスのin silico研究

*Kazuo Nakazawa1, Shin Inada1, Yusaku Kishida1, Naoki Tomii2, Kenshi Takayama3, Takashi Ijiri4, Mutsumi Aoki4, Takeshi Yamaguchi5, Ryo Haraguchi6, Nitaro Shibata7, Tohru Suzuki8, Takashi Ashihara9 (1. 森ノ宮医療大学, 2. 東京大学大学院工学系研究科, 3. 株式会社サイバーエージェント, 4. 芝浦工業大学工学部情報学科, 5. 四国大学看護学部, 6. 兵庫県立大学大学院情報科学研究科, 7. 新宿三井ビルクリニック, 8. 金沢工業大学高信頼理工学研究センター, 9. 滋賀医科大学)

Atrial Fibrillation, Computer Simulation, Visualization

【はじめに】心房細動(AF)は心不全や脳梗塞の大きな原因となる不整脈である。早期の発作性AFの治療にはカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術が有効である。しかし、AFが長期に持続する非発作性AFには有効な手法は確立されておらず、治療の前提となる非発作性AFの興奮伝播ダイナミクス自体が十分に解明されていない。【目的】AF患者を想定したヒト3次元心房モデルを構築して、非発作性AFの典型的な症例再現を目指した大規模電気生理学シミュレーションを実施する。特に、AFの発生起源となる肺静脈からの異常興奮、および心房部位毎の異所性興奮からのAFの発生について評価を行う。【方法】ヒトMRIデータから3次元心房形状モデルを作成し、さらに心房細動患者を想定した形状修正を施した。同モデルをボクセルモデルに変換し、ヒト心房筋細胞の活動電位モデルを組み込み、心房筋の線維走向の変化を実装した。AFの起源と考えられる肺静脈起源の異常興奮、および心房部位毎の異所性興奮に基づいて旋回性興奮波を発生させ、活動電位モデルの特性を系統的に変化させるin silico実験を実施した。より具体的には、正常および心不全患者を想定した2種類の活動電位モデルに対して、心房筋間の伝導特性を担うギャップ結合のパラメータと異常興奮のペーシング間隔を順次変化させた。【結果・考察】正常心房ではAFを発生させることはできないこと、さらに病的障害の程度が亢進するに従ってAFの持続性を高めることが確認された。また、AFを想定した興奮波は、機能的リエントリーと解剖学的リエントリーが混在する複雑な興奮伝播ダイナミクスになることが確認された。また、正常に近い心房においては、AFが持続しないような抗不整脈メカニズムがあること、さらに典型的な非発作性AF症例の再現には、心房基質の不均質性に対応する生理学的特性が十分でないことなどが示唆された。