一般社団法人 日本医療情報学会

[3-H-1] 医療DX時代の地域医療情報ネットワーク(地連)の将来像
~全国医療情報プラットフォームとの共存・併用による効果~

*松本 武浩1,2、名越 究3、横山 邦彦4、伊藤 龍史5、柳原 毅志6、石黒 満久7 (1. 長崎大学病院 医療情報部、2. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療情報学、3. 島根大学医学部 公衆衛生学、4. 公立松任石川中央病院 PETセンター、5. 株式会社エスイーシー、6. 富士通Japan株式会社 ソリューショントランスフォーメーション本部、7. 株式会社NTTデータ中国  公共事業部)

新型コロナ感染症によるパンデミックはわが国医療の脆弱性を露呈したが、同時に情報化の致命的な遅れも露呈した。電子カルテ導入率にも差があるが、すでに欧米ではEHRが広く普及しており、そのRWDとしての利活用も進められている。一方、我が国のEHRは、地連として全国に構築されたが、利活用が不十分な取組みも少なくない。この状況に対し政府は、オンライン資格確認の義務化、マイナカードの保険証利用、電子処方箋の運用に加え、全国医療情報プラットフォーム(以下 PF)を構築し、2025年に運用開始予定である。この機能の一部は地連と重複しており、地連の先行きが不安視されている。長崎県のあじさいネットは全国最大規模の地連であり、地連の主機能である拠点病院の電子カルテ情報共有は、医師記録、看護記録も含め電子カルテの全情報である点が特徴である。これに対し、PFの共有情報は3文書6情報とされ、医師記録、看護記録は含まれていない。あじさいネットでの最も利用されている診療情報は、医師記録、看護記録であり、全体の5割を超えている。また、高専門性の疾患患者も原則逆紹介される地域完結型医療下では、質の高い継続医療に必要な情報は多岐に渡り、医師の専門や経験あるいは知識・スキル毎に必要な情報は異なるため、共有可能な診療情報には網羅性が必要である。このためPFが完成し普及しても、地連の併用は必須と考えられる。逆に診療所等拠点病院以外からの診療情報収集が容易でない点は地連の弱点であるが、PFから得ることで、この弱点を払拭できる。禁忌・アレルギー情報が一律に得られる点も有効である。これらは公開されたAPI連携仕様により地連上での閲覧も技術的には可能であり、この実装で有用性はさらに増すものと思われる。したがって少なくとも地連利活用が進んでいる地域では両者の併用が地域医療の質向上に向けて最良の選択と考えられる。